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亡き後も生まれ続けるザハ建築。 最新作と今後のプロジェクトを紹介!

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March 31, 2018 | Architecture | a wall newspaper | text_Megumi Yamashita editor_Yuka Uchida

2018年3月31日はザハ・ハディドの2回目の命日。あの日からザハ事務所はスピードを緩めることなく新作を発表し続けています。ロンドンのオフィスに潜入し、出来たばかりの最新作について、また今後のプロジェクトについて話を聞きました。

ザハ・ハディドの設計で昨年秋にオープンした〈アブドラ国王石油調査・研究センター〉。彫刻性と機能を合体した独特のスタイルは、ふんだんな土地と予算を有する中東にて、見事に花開いた。photo_Hufton+Crow ©Zaha Hadid Architects

新国立競技場案の白紙撤回から約半年後、ザハ・ハディドの突然の死は大きなショックであり、また一つの時代の終わりを感じる出来事でもあった。とはいえ、生前からザハの右腕だったパトリック・シューマッハーが後を引き継ぎ、巨大なプロジェクトが多数進行中でもある。ロンドンのオフィスを訪ね、勤続14年というヴィヴィアンナ・マスチェトーラに話を聞いた。

ザハに育てられたというヴィヴィアンナ・マスチェトーラ

「突然、ザハを失ったショックは筆舌しがたいですね」。AAスクールでの批評会でザハに声をかけられ、卒業後すぐに入社したというヴィヴィアンナ。「当時はまだ所員も少なかったので、本当にザハに育てられたという感じです。噂にたがわず、時には短気で厳しい人でしたが、同時にジョークを絶やさぬ楽しい面もあって……」
 そのぶっ飛んだ作風だけでなく、女性でイラク出身という面でも、さらなる戦いを余儀なくされたザハ。その姿を見てヴィヴィアンナは建築家として成長してきた。
「彼女に教わった一番大きなことは、諦めないこと。前例のないデザインも構造も、必ず実現できる方法があるというチャレンジ精神ですね。現在完成しつつある作品の多くはザハ自身が関わったものですが、亡き後に始まったもの、コンペで取ったものも続いています。長年勤務している人が多く、みんな鍛えられていますからね」

2017〈アブドラ国王石油調査・研究センター〉  昨年10月に一般公開されたサウジアラビアのリサーチセンター。構造を最小限に止める六角形柱のハニカム構造を採用し、砂漠から現れ出て結晶化したエネルギーを表現する。まっすぐな壁や天井がほぼない、SFチックなびっくり建築。photo_Hufton+Crow ©Zaha Hadid Architects

昨秋に完成したサウジアラビアの〈アブドラ国王石油調査・研究センター〉は現実とは思えぬ未来的な作品だ。ヴィヴィアンナが担当するマカオのホテル〈モーフィアス〉も間もなくオープンになる。
「フリーフォームのスチール構造では世界最高層です。彫刻的フォルムを建築にするため、技術面でも常に新しい挑戦をしています」

2018〈520 ウエスト 28th〉 間もなく入居が始まる、ニューヨーク・マンハッタンのウエスト・チェルシー地区にある11階建ての高級コンドミニアム。ハイライン・パークに面し、パブリックスペースと入り組む彫刻的なフォルムは外観に止まらずインテリアにも続き、ザハ色が炸裂する。photo_Hufton+Crow
2018〈モーフィアス〉  カジノが集まるマカオのコタイ地区に2009年に開業した総合リゾート〈シティ・オブ・ドリームズ〉内にできる40階780室のリゾートホテル。スチールのスケルトンが外側から支える構造で、中央に穴が3つ貫く彫刻的な外観。同様に内観も圧巻! ©Zaha Hadid Architects

北京の〈リーザ・ソーホー〉は地下鉄の駅の上にそびえる高層ビルで、190Mある前代未聞のアトリウムが中央を貫く。北京では国内最大の空港も建設中だ。
「ヨーロッパに比べ、アジアや中東のほうが、新しい技術への挑戦心がありますね。この事務所は50か国のスタッフが働いているので、ザハの遺志を引き継ぎ、あらゆる挑戦に立ち向かうキャパシティーを備えていると思います」

2018〈リーザ・ソーホー〉  北京南西の新金融街に完成間近なオフィス&住居ビル。建設中の2つの地下鉄駅の上に建つ。地下鉄のトンネルを避けるため、二つのビルがツイストしながら寄りかかるようなデザインで、その間の部分が190m吹き抜けたアトリウムになっている。renders_MIR ©Zaha Hadid Architects

ザハ亡き後にコンペで取ったプロジェクトには、イギリス中東部のサッカースタジアムがある。「木造構造でエコ仕様なデザインです。東京の新国立競技場のことは残念でしたが、ここから学んだ教訓を生かし、私たちは次に進んでいます。日本にもぜひ何か建てたいものです」。ザハは建築作品だけでなく、人も育てて旅立っていった、そんな印象を受けた。

2019〈北京大興国際空港〉  2011年に国際コンペで選ばれた北京南部に建設中の新空港。中央のメインコンコースから桟橋状に6本ターミナルが伸び、出入国と機内乗降をスムーズにするデザイン。 段階的にキャパを増やす計画で、2025年には1億人以上の利用者を見込む。renders_Methanoia ©Zaha Hadid Architects
ザハ・ハディド 1950年イラク生まれ。AAスクール卒業後、ロンドンにオフィスを設立。時代を先駆けすぎたアンビルトの時代を経てブレイク。プリツカー賞など各賞受賞。2016年に急逝。

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