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田根剛がリノベーションする倉庫がアート・スペースに!

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December 12, 2017 | Art, Architecture, Travel | casabrutus.com | text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano

弘前にたたずむ赤レンガの倉庫が、建築家・田根剛の設計で現代美術館に! 2020年度の開館が楽しみになる “予告編” をお届けします。

〈弘前市芸術文化施設〉(仮)外観。アプローチにも赤レンガが敷き詰められて、期待感が高まる。  (c) ATELIER TSUYOSHI TANE ARCHITECTS

青森県弘前市にある〈吉野町煉瓦倉庫〉は、明治時代からリンゴが盛んに生産された土地に建つ。この建物は1907年に建てられ、戦後、日本で初めてのシードルの生産拠点となった。その後倉庫となり、今もなお端正な姿を見せる。この建物が2020年度に〈弘前市芸術文化施設〉(仮)として生まれ変わることが決まった。

ここでは2002年から2006年にかけて奈良美智が3度、個展を開いて話題になった。ていねいに積み上げられた赤レンガや迫力ある梁に守られた大スペース、ダイナミックな吹き抜けなど、奈良に限らずアーティストなら一度はここで作品を展示してみたいと思わせる個性的な空間だ。

もっとも天井が高い展示室では最大天井高さが15mにもなる。迫力ある空間がアーティストや観客を刺激する。  (c) ATELIER TSUYOSHI TANE ARCHITECTS

改修設計を担当する田根剛は建物の持ち味をできるだけ活かして、弘前の歴史に思いをはせることができるデザインを目指した。老朽化した屋根は陽に輝くシードルをイメージした「シードル・ゴールド」の屋根瓦に。傷んだ外壁はすべて赤煉瓦で覆ってかつての記憶を受け継ぐ。

〈弘前市芸術文化施設〉(仮)模型。シードル・ゴールドの屋根がまぶしい。  (c) ATELIER TSUYOSHI TANE ARCHITECTS

総合アドバイザーは森美術館館長の南條史生。彼らはここを単なる美術館ではなく、外部から来た人と地域の人、あるいは地域の人どうしが交流できる場をつくりたいと考えている。町のシンボルとして愛されている〈吉野町煉瓦倉庫〉では、住んでいる人が主役なのだ。

最初の展示スペースはもとの壁や柱、梁などを残して建物の記憶を受け継ぐ。  (c) ATELIER TSUYOSHI TANE ARCHITECTS

そのために田根が考えたのが「タイムスペシフィック」というコンセプトだ。屋外空間も含め、あるスペースが期間に応じて展示室になったり、公開制作やワークショップの場になったりする。たとえば展示のかたわら隣の部屋でアーティストに公開制作をしてもらったり、関連したワークショップを行う、といった柔軟な使い方ができるのだ。アートを見るだけでなく語る、作る、制作過程を見るといったプログラムでより深く、多彩な視点から楽しめる。

建物は2階建て。2階の最初の展示室は温度・湿度を厳密に保てるホワイトキューブになる。  (c) ATELIER TSUYOSHI TANE ARCHITECTS

〈弘前市芸術文化施設〉では何よりも建築自体がアーティストをインスパイアする力がある。このスペシャルな場所から何が生まれてくるのか、2020年春が待ち遠しい。

ミニキッチンのある2階のオープンライブラリー。市民活動の場やラウンジスペースとしても利用可能。アート以外にも多様な活動ができる。敷地内には、他にカフェやショップも併設される。  (c) ATELIER TSUYOSHI TANE ARCHITECTS
シードル・ゴールドの屋根が公園と一体となって街のシンボルに。  (c) ATELIER TSUYOSHI TANE ARCHITECTS

田根 剛

建築家。1979年生まれ。ATELIER TSUYOSHI TANE ARCHITECTSを率いてパリを拠点に活動。2016年に開館した〈エストニア国立博物館〉では旧ソ連軍の軍用滑走路の延長に建築を設計し、話題になった。 photo_Yoshiaki Tsutsui

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