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いまパリが検証する「モダンであること」。〈フォンダシオン ルイ・ヴィトン〉MoMAコレクション展

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November 12, 2017 | Art, Architecture, Travel | text_Chie Sumiyoshi

すっかりパリの顔のひとつとなったフランク・ゲーリーの〈フォンダシオン ルイ・ヴィトン〉で、大規模なMoMAのコレクション展が開幕。隠れた名作も多数展示しています。

シニャック、キリコ、カルダー、そして“現代美術の父”、マルセル・デュシャン(手前)のレディメイド彫刻。2つの大戦の狭間で戦地となった「狂乱のパリ」から、軍需景気に潤うニューヨークへと中心を移していった20世紀前半の美術史を一気に駆け抜ける。

これほどの規模のMoMA展がフランスで開催されるのは意外にも初めてなのだという。膨大な所蔵品から厳選された200点の展示の大きな見どころは、これまでパリに旅する機会の少なかったアメリカの現代美術を通して戦後史を通観していることだ。

「1929年、ちょうどモダニズムの黎明期に始まり現在に至るMoMAのコレクションは極めて多様性に富んでいます。アートの変容を、時代背景とともに時系列で見せる展示が、“モダン”の定義を改めて検証し、社会環境の変化を人類学的に俯瞰することにつながる、挑戦的なインスタレーションになったと思います」と近年ポンピドゥーからMoMAへ移った本展キュレーター、クエンティン・バジャックは語る。彼の言うように、20世紀初頭に美術の中心地がパリからニューヨークへ移って以降、アメリカを基点に見た現代社会の様相すべてがMoMAのコレクションに反映されているといってもいい。民間の寄付や寄贈に支えられる私設美術館であればこそ、個人の感覚や思想の投影であるアートコレクションは歴史的に重要なアーカイブであり、そのキュレーションは時代精神を理解し評価する使命を帯びている。

「近現代美術の象徴であるMoMAのコレクションを当館でどう見せるのか。それはプライベートに育まれてきた情熱や審美眼を公にして、広く人々の心を揺さぶるという大きなリスクを伴う仕事です。私設美術館ならではの選ばれしミッションと自負しています」とアドバイザーを務めるジャン・ポール・クラヴリは語る。

共にリーダーが交替したフランスとアメリカの私設美術館が仕掛ける本展から何を読み解くか。議論は大いに白熱するはずだ。

我らが草間彌生(手前)、フルクサス作家ブレクト、ナウマンのネオン彫刻、からの、ソニック・ユースのジャケットでも知られるクリストファー・ウールのグラフィックペインティングへ。戦後アメリカ全土に拡大した消費社会の発展をきめ細くたどる展示が続く。

Roy Lichtenstein
Drowning Girl, 1963

MoMA設立以来の進取性に沿って速攻で所蔵されたリキテンスタインの代表作である漫画を引用したグラフィックペインティング。 ©Estate of Roy Lichtenstein New York / ADAGP, Paris 2017

Rem Koolhaas
Madelon Vriesendorp, Welfare Palace Hotel Project, Roosevelt Island, New York City, New York, 1976

オランダ人建築家レム・コールハースが1978年に著したポストモダン都市建築論『錯乱のニューヨーク』のためのイラスト。 ©Adagp Paris, 2017

Ellsworth Kelly
Colors for a Large Wall, 1951

第二次大戦後のNYのアートシーンを象徴する抽象表現主義の大作絵画。フォンダシオン所有のケリーのコレクションにも注目したい。 ©2017 The Estate of Ellsworth Kelly

Jeff Wall
After “Invisible Man” by Ralph Ellison, the Prologue, 1999-2000

アフリカ系米国人作家ラルフ・エリソンの小説を忠実に再現し、1,369個の電球を設置して撮影された映画的なライトボックス写真。 ©2017 Jeff Wall

Constantin Brancusi
Bird in Space, 1928

20世紀の抽象彫刻に大きな影響を与えたルーマニア出身の彫刻家ブランクーシ。パリのアトリエはポンピドゥーに保存されている。 ©Succession Brancusi - All rights reserved (Adagp) 2017. Crédit photo_Fondation Louis Vuitton / Marc Domage

Shigetaka Kurita,NTT DOCOMO, Inc.,
Emoji, 1998-1999

MoMAがモダニズムの文脈の主軸に置くデザインコレクション。携帯の絵文字はデジタルコミュニケーションに人間性をもたらした。 ©2017 Shigetaka Kurita

Andy Warhol
Double Elvis, 1963

ハリウッドのアーカイブ写真から制作され、ボブ・ディランに贈られた本作は、回り回って2001年にMoMAのコレクションに入った。 ©The Andy Warhol Foundation for the Visual Arts, Inc. / ADAGP, Paris 2017

Rirkrit Tiravanija
untitled (the days of this society is numbered / December 7, 2012), 2014

タイのクーデターから2年前の日付の各国の新聞より挑発的なスローガンをコラージュした作品は世界規模の対立を不吉に予感させる。 ©2017 Rirkrit Tiravanija

関連記事:フランク・ゲーリーの〈フォンダシオン ルイ・ヴィトン〉を空撮したショート・フィルム「ダニエル・ビュレンを空から見てみよう!」

『Être moderne: Le MoMA à Paris』展

〈Fondation Louis Vuitton〉
8 Avenue du Mahatma Gandhi, 75116 Paris
TEL 33 1 4069 9600。11時〜20時(金〜21時、土・日9時〜21時、第1金〜23時)。火曜休。入場料14ユーロ。

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