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タピオ・ヴィルカラの日本初の回顧展で、「世界の果て」を観る。

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April 17, 2025 | casabrutus.com | text_Megumi Yamashita editor_Keiko Kusano

フィンランドのモダンデザインをリードしたタピオ・ヴィルカラ(1915-1985)の回顧展が、〈東京ステーションギャラリー〉で開催中。

中央は《孔雀の羽》のタイトルの積層合板を立体的に削った1970年代末の作品。Photograph: Kohei Take

展覧会のタイトル「世界の果てーウルティマ ツーレ」とは、ラップランドの最北端の地、そしてその雪解けの様子にインスピレーションを得て1968年に発表された、イッタラのガラス器シリーズの名前。1940年代から40年に渡りイッタラから400点ものガラス製品を発表しているヴィルカラだが、その中でも《ウルティマ ツーレ》は今もベストセラーを続ける彼の代表作だ。

《ウルティマ・ツーレ(ドリンキング・グラスのセット)》1968年 Tapio Wirkkala Rut Bryk Foundation Collection / EMMA – Espoo Museum of Modern Art. (c) Ari Karttunen / EMMA ©KUVASTO, Helsinki &JASPAR, Tokyo, 2024 C4780

今年は彼の没後40年。日本では初となるこの回顧展では、《ウルティマ ツーレ》300個を使ったインスタレーションと、1967年のモントリオール万博で発表された全長9メートルにおよぶ同名の木彫レリーフの映像をハイライトに、「世界の果て」の自然の造形や躍動感にインスピレーションを得たヴィルカラの作品群を振り返る。

《ウルティマ ツーレ》300個を使ったインスタレーションと1967年モントリオール万博で発表された同名の木彫レリーフの写真。Photograph: Kohei Take
《ウルティマ ツーレ》は、ラップランドの雪解けの様子が表現されている。Photograph: Kohei Take

展示作品はガラスや磁器のテーブルウェアから、シルバーやステンレスのカトラリー、商品のボトルやパッケージ、機内用のプラスチック製食器、照明や家具、木目を生かした彫刻作品、ゴールドのアクセサリー、切手や紙幣のグラフィック、建築案まで多岐に渡る。

手前はタンペレのカレヴァ教会のコンペ案(1959)。フューチャリスティックな建築案もいくつか残している。Photograph: Kohei Take
斧、ナイフ、銀製のカトラリーなど、用の美が感じられる。Photograph: Kohei Take
1940年代から40年に渡る〈イッタラ〉のガラス作品の展示もたっぷりある。Photograph: Kohei Take

主にヘルシンキやエスポーなど都市部で制作したヴィルカラだが、妻でセラミック・アーティストのルート・ブリュックとともに定期的に過ごしたラップランド・イナリの「世界の果て」の小屋の写真や、そこで愛用した道具の展示もある。自然の美しさや神秘を創作源にした繊細かつダイナミックでモダンな作品は、唯一無二の個性を放っている。

《シェル(巻貝)》(1956)。積層合板を立体的に削り、木目の美しさを際立たせた「リズミック・プライウッド」のシリーズより。Tapio Wirkkala Rut Bryk Foundation Collection / EMMA – Espoo Museum of Modern Art. (c) Ari Karttunen / EMMA (c) KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo, 2024 C4780
《ボッレ》(1967)。ヴェネチアのムラーノ島の工房〈ヴェニー二〉で制作したガラス製品のシリーズでは、カラフルな色が躍動する。Tapio Wirkkala Rut Bryk Foundation Collection / EMMA – Espoo Museum of Modern Art. (c) Ari Karttunen / EMMA  (c) KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo, 2024 C4780
《スオクルッパ》(1975)。こちらは木彫だが、ブロンズやガラスなどの多岐にわたる素材で、鳥をモチーフにした作品がある。 Tapio Wirkkala Rut Bryk Foundation Collection / EMMA – Espoo Museum of Modern Art. (c) Ari Karttunen / EMMA (c) KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo, 2024 C4780

〈東京ステーションギャラリー〉

東京都千代田区丸の内1-9-1 TEL 03 3212 2485。〜2025年6月15日。10時〜18時(金〜20時)。月曜休(ただし5月5日、6月9日は開館)。入場料 1,500円。

タピオ・ヴィルカラ

1915年フィンランド、ハンコで生まれ、美術工芸中央学校卒。1945年にルート・ブリュックと結婚後、イッタラ社のデザインコンペで優勝。同社のデザイナーを40年ほど務める一方、1966年にデザイン事務所を設立し、フィンランド紙幣のデザインでなど国を代表するデザイナーに。1985年没。2003年にタピオ・ヴィルカラ・ルート・ブリュック財団が設立され、2人の作品はエスポー近代美術館(EMMA) に寄託されている。

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