April 8, 2025 | Architecture, Art, Culture, Design, Travel | casabrutus.com
「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに2025年4月から開催される、大阪・関西万博。国内外から様々なパビリオンが集まる万博の見どころを建築を中心に一挙にご紹介します! (本記事は随時更新。施設名と併記する形で建築家名を表記) (最終更新日:2025年4月8日)
【メイン施設】
劇場、迎賓館など会場全体のシンボルとなる施設。
■ 大屋根リング|藤本壮介



会場デザインプロデューサーを務める藤本壮介が設計する巨大なリングは万博のシンボル的存在だ。内径615メートル、高さは最大で20メートル、完成すると世界最大級の木造建築となる。1000年以上に及ぶ日本の木造建築の歴史を発信するこのリングは世界がつながっていることを示し、大空を見上げる窓枠となる。
来場者はこの大屋根の下を通って会場に出入りし、円形の回遊路から会場を見渡しながら移動できる。また大屋根が雨や強い日差しから来場者を守ってくれる。どちらが上などというヒエラルキーがない正円は多様性を包括する万博のコンセプトにもふさわしい。円の中心となる場所にはパビリオンはなく、森となっている。自然と共生する社会のあり方も暗示する。
設計:藤本壮介建築設計事務所+東畑建築事務所+梓設計
■ EXPO ホール|伊東豊雄



万博の開・閉会式の会場となる〈EXPO ホール〉(愛称「シャインハット」)は伊東豊雄の設計による建物。高さ20メートルの白い円錐状の構造物の上に、直径約70メートルの金色の屋根が載っている。これは、世界から情報を集める「パラボラアンテナ」や、1970年の大阪万博で作られた《太陽の塔》の上部にある「黄金の顔」からインスピレーションを得たものだ。
内部は床や客席を含めて全てが白一色で統一され、見上げると黄金に輝く天井が目に入る。中心には直径18メートルの円形ステージがあり、約1850席の客席が囲む。ホール内全体が純白の布で覆われて、「いのち輝く未来」を象徴する祝祭空間となる。
基本設計・監修:伊東豊雄建築設計事務所
■ EXPO ナショナルデーホール|平田晃久



〈EXPO ナショナルデーホール〉は参加する国や地域がそれぞれの文化などを紹介する「ナショナルデー」などのイベントで使われるもの。平田晃久が設計した。愛称は「光が差し込む庭」の意味を込めた「レイガーデン」。人工の海辺「つながりの海」に向かって伸びる建物には約500席のホールや海が見えるレストラン、能舞台を模した小ステージなどがある。
ファサードには斜めに伸びる長いスロープがあり、周囲の景色を眺めながら歩ける「空中デッキ」となる。このスロープは関西を斜めに貫く地形のしわや、淀川水系へと抜ける風の方向とも共鳴する。このデッキで登れる最大の高さは約18メートル。光を感じながら海を眺められる、絶好のスポットだ。
設計・施工・監理:鴻池・安井・平田晃久グループ
■ 迎賓館|日建設計+藤本壮介


日建設計・大阪オフィスが設計、藤本壮介がデザイン監修を手がける〈迎賓館〉は各国の国王や大統領といった賓客を迎えるための施設。自然光、自然通風、自然素材を使い、庭園や広い空、屋根を「輪の回廊」でつなぐ。
この〈迎賓館〉では川島織物セルコンが手塚愛子、川人綾の2人の現代アーティストをデザイン・制作監修に迎え、タペストリーを制作している。手塚は糸をほどくことで生まれる織物の繊細さとダイナミックさを表現する。川人は「制御とズレ」をテーマに日本の伝統的な染織や現代の神経科学を背景にした抽象的な作品を制作している。伝統と未来、自然との共生を表現する空間だ。
基本設計:日建設計
デザイン監修:2025年日本国際博覧会 会場デザインプロデューサー藤本壮介/株式会社藤本壮介建築設計事務所
【シグネチャーパビリオン】
会場の中央に位置する、8人のプロデューサーが主導するパビリオン。この「シグネチャーパビリオン」と「シグネチャーイベント」を通じて「いのち」について考え、その概念をアップデートする場になる。
■ null²(落合陽一プロデュース)|NOIZ 豊田啓介


銀色に輝くキューブが周囲の景色を歪ませるパビリオン。落合陽一がプロデューサーを務め、建築デザインはNOIZが手がける。テーマは「いのちを磨く」。NOIZは変形しながら風景を歪める彫刻のような構造物を生み出した。鏡面となっているファサードが物理的に湾曲し、訪れた人や周囲の光景を歪ませる。「null²」は「ヌルヌル」と読む。「null」は英語でゼロを表し、「ヌルヌル」は鏡面のぬるっとした感じも表す。
パビリオンの内部では“デジタルの鏡"が来場者の身体をデジタル化し、もう一つの身体を出現させる。物理とデジタル、2種類の鏡が未知の光景とともに私たちの未来を映し出す。
建築デザイン:NOIZ 豊田啓介
公式サイト:https://expo2025.digitalnatureandarts.or.jp/
■ Better Co-Being(宮田裕章プロデュース)|SANAA







宮田裕章がプロデュースする〈Better Co-Being〉があるのは会場中央の「静けさの森」の一角。建物はSANAAがデザイン、ユニフォームは中里唯馬とゴールドウイン社が共同開発した。パビリオンには屋根も壁もなく、格子状の構造体が空に浮かんでいるように見える。来場者は雲か森の中を歩いているように感じられることだろう。
〈Better Co-Being〉内ではアーティストの塩田千春、宮島達男らが作品を展示する。また「静けさの森」でもオノ・ヨーコ、ピエール・ユイグ、レアンドロ・エルリッヒらが作品を発表する。いずれも宮田裕章と〈金沢21世紀美術館〉館長の長谷川祐子の共同キュレーションによるものだ。
このパビリオンの来場者はグループを組み、一期一会のつながりを起点に大きく3つからなる共鳴体験を巡る。多様ないのちと響き合う体験は、分断を超え、あらゆるいのちが輝く未来社会への道筋となるだろう。
建築デザイン:SANAA
キュレーション:長谷川祐子
公式サイト:https://co-being.jp/expo2025/
■ EARTH MART(小山薫堂プロデュース)|隈研吾




放送作家・脚本家の小山薫堂がプロデュースするパビリオン〈EARTH MART〉は隈研吾のデザインによるもの。小山は「食を通じて、いのちを考える」パビリオンを構想した。建物は食といのちの循環を象徴する「循環型建築」だ。たとえば幾重にも重なる屋根は職人たちの手による茅葺きとし、万博の終了後に再活用される予定となっている。
茅葺き屋根が連なる建物は小さな集落のようにも見える。内部では「空想のスーパーマーケット」を展示、慣習にとらわれない新たな食べ方と向き合い、環境や飢餓といった問題と食の未来を考えるものになる。
建築:隈研吾
アートディレクター:八木保
公式サイト:https://expo2025earthmart.jp/
■ いのち動的平衡館(福岡伸一プロデュース)| 橋本尚樹


生物学者・作家の福岡伸一がプロデュースを手がけるパビリオンは、うねる鉄骨に膜を張った構造。膜による屋根は海の生き物がうねるようにも見える。生物学者である福岡にふさわしいデザインだ。設計者の橋本尚樹は1985年生まれ、ジャン・ヌーヴェル、内藤廣の事務所を経て2018年に独立した。
この〈いのち動的平衡館〉のコンセプトは福岡が探究している「生命とは何か」と直接的に結びつくものだ。生命はつねに動的な状態にあり、「エントロピー増大の法則」によって無秩序へと向かう宇宙の中、生命だけは自らを分解し、作り直すことで秩序を保とうとしている。この「動的平衡」がパビリオンのテーマだ。内部ではTakramが演出ディレクションを担当するインタラクティブな光のインスタレーションが展示される。
うねる屋根は細胞膜のゆらめきのようにも見える。動的平衡の瞬間を切り取ったかのような建築だ。
建築:橋本尚樹
展示演出:Takram
公式サイト:https://www.expo2025-fukuoka-shin-ichi.jp/
■ いのちの未来(石黒浩プロデュース)| 遠藤治郎


人とかかわるロボットやアンドロイドサイエンスの研究者、石黒浩プロデュースによるパビリオンは、カテナリー曲線(懸垂曲線)で覆われた黒いメッシュ膜材を水が流れ落ちる外皮を持つ。物質の三態の交わる渚を構成する水が、無機物と有機物を結びいのちを育んできたことから、このデザインは着想されている。
コンセプトは「いのちを拡げる」。急速に進歩するテクノロジーによって人間とロボットやアンドロイドとの距離が近くなれば、人間の可能性はより拡がっていくはずだ。ロボットやアンドロイドによって変わっていく50年後、1000年後の世界が見えてくる。
建築・展示空間ディレクター:遠藤治郎
バーチャル空間ディレクター:宇川直宏
公式サイト:https://expo2025future-of-life.com/
【国内パビリオン】
〈日本館〉など日本の団体・民間企業のパビリオン。建築・コンテンツで日本から世界に発信する。
■ ウーマンズ パビリオン in collaboration with Cartier|永山祐子




永山祐子が設計する〈ウーマンズ パビリオン in collaboration with Cartier〉は内閣府、経済産業省、カルティエ、博覧会協会の共同出展によるもの。カルティエは2020年のドバイ万博でもジェンダーの平等と女性の社会的地位の向上の重要性を伝えることを目的に同名の〈ウーマンズ パビリオン in collaboration with Cartier〉を出展、多くの来場者を集めた。大阪でのパビリオンではドバイに続いてジェンダー平等に光をあてるとともに、ドバイ万博日本パビリオンのファサードを再活用するというこれまでにない試みにも注目が集まっている。永山は部材をボールジョイントで接合し、解体・運搬ができるようにデザインしていた。
コンテンツのキュレーションはイギリスのアーティスト、エズ・デヴリンが務める。ドバイ万博の英国パビリオンや、ビヨンセ、U2などのステージデザインを手がけてきた実力派だ。日英2人の女性が作り出すジェンダー平等に光をあてる空間が広がる。
設計監理:永山祐子建築設計、オーブ・アラップ・アンド・パートナーズ・ジャパン・リミテッド
グローバルアーティスティックリード:エズ・デヴリン
公式サイト:https://womenspavilion.cartier.com/ja/
■ 日本館|佐藤オオキ

「いのちと、いのちの、あいだに」をテーマに、円環状の構造体によって「いのちのリレー」を体現する日本館は、ホスト国のパビリオンとして存在感を放つ。総合プロデュース&デザインは佐藤オオキが担当している。
パビリオンの最大の特徴は、円を描くように立ち並ぶ無数の「木の板」。その隙間からは内部を垣間見ることができ、中と外、展示と建築の連続によって、日本館のテーマにもある「あいだ」を来場者が意識するきっかけをもたらす。
万博会場で出た生ごみを利用したバイオガス発電など日本の先端的な技術等を活用し、一つの循環を体現するパビリオン。持続可能な社会に向けた来場者の行動変容を促す。
日本館総合プロデューサー/デザイナー:佐藤オオキ
コピーライター:渡辺潤平
アートディレクター/グラフィックデザイナー:色部義昭
基本設計・実施設計:日建設計
公式サイト:https://2025-japan-pavilion.go.jp/
■ 大阪ヘルスケアパビリオン Nest for Reborn|東畑建築事務所




透明の膜で覆われたパビリオンは、開催都市である大阪府・大阪市の〈大阪ヘルスケアパビリオン Nest for Reborn〉。「REBORN」というテーマのもと、未来の健康、医療、生活を提供する。海と川に恵まれ、全国から集まった木材により発展してきた水都・大阪の“歴史”と“新たな成長”を発信する「多様な屋根のもと木・光・水を再構築した建築」。「光」を透す多様な形態の屋根の上を、「水」が流れて循環し、それらが「木」の建築を覆う。
展示空間は楕円がいくつか重なった形となっており、DNAをイメージした螺旋状の柱が象徴的に屋根を支える。膜屋根の上には循環させた水が屋根全体を包み込むように流れ落ち、屋根の先端に集まって水柱を形成しながら水盤に流れ込む。水盤にはステージが設置され、様々なイベントが行われる予定だ。
設計:東畑建築事務所
公式サイト:https://2025osaka-pavilion.jp/
■ ノモの国|永山祐子




永山祐子建築設計と大林組の設計による、「循環」を表現した立体的なモチーフが全面を覆うパビリオン。ファサード膜はシャボン玉のように、その時々の季節や光によって見え方が変化する。膜は風で揺らぎ、自由で軽やかな印象をもたらす。パビリオンのコンセプト「解き放て。こころとからだとじぶんとせかい」とも呼応するデザインだ。「ノモ」は「モノ」を逆にした造語。モノは心の持ちようで変わる、いわばモノとココロは写し鏡のような存在であるという考えから名づけられている。パビリオン全体はひとと世界は循環し、つながり合う存在であることを表現する。
「ノモの国」では2010年代以降に生まれた子どもたちに向けてのメッセージが発信される。子どもたち一人ひとりの感性が刺激され、想像力が解き放たれるきっかけを与えてくれる体験型のパビリオンだ。
設計監理:大林組/永山祐子建築設計/構造計画研究所/オーヴ・アラップ・アンド・パートナーズ・ジャパン・リミテッド
総合プロデューサー:電通/電通ライブ
公式サイト:https://the-land-of-nomo.panasonic/
■ 飯田グループ×大阪公立大学共同出展館|高松伸

飯田グループホールディングスと大阪公立大学が共同で出展するパビリオンは長径約64メートル、短径約39メートルの巨大な楕円形をしたもの。「サステナブル・メビウス」をコンセプトに高松伸が設計した。コンセプトの通り、メビウスの輪を応用した構造体が、西陣織の老舗「細尾」が制作した織物で覆われている。柄は日本の伝統的なモチーフだ。
この西陣織は外部に露出しているため、強度・耐光性・耐火性など厳しい基準をクリアしなくてはならない。西陣織の表裏に特殊なコーティングを施し、また曲面を覆うためにCADや3Dマッピングの技術を駆使して立体になっても柄がつながっていく織物を実現している。日本の伝統をこれまでにないスケールで表現する、インパクトのあるパビリオンだ。
設計:高松伸建築設計事務所
西陣織制作:細尾、太陽工業
公式サイト:https://www.ighd.co.jp/lp/expo2025.html
■ ブルーオーシャン・ドーム|坂茂



ゼリ・ジャパンは資源とエネルギーを再利用し、廃棄物をゼロに近づける循環型社会の実現を目指す認定NPO法人。今回の万博に出展する〈ブルーオーシャンドーム〉は坂 茂の設計。主構造は飛行機のボディなどに使用され、鉄と同程度の強度を持つカーボンファイバーだ。比重が鉄の約1/5と軽量であり、基礎に杭を打たなくても大規模な空間を実現できる。このほかに坂建築のアイコンともいえる紙管や、竹の集成材などが使われる。いずれも容易に解体・リサイクルできる素材だ。
総合プロデューサーは原研哉。「海の蘇生」を全体のテーマに、「循環」「海洋」「叡智」というキーワードのもと、3つのドームで展示を行う。海洋プラスチック、珊瑚礁の減少など海にまつわるさまざまな問題を改めて考えさせるものになる。
設計:坂茂
総合プロデューサー:原研哉
公式サイト:https://zeri.jp/expo2025/
【海外パビリオン】
諸外国・地域が出展するパビリオン。その国の建築家を起用したパビリオンもあり、それぞれに個性的な建築が楽しめる。
■ オランダ館|RAU




オランダ館は緩やかにうねる水のようなファサードに巨大な球体が浮かんでいるようなデザイン。設計を担当したアムステルダムのトーマス・ラウ率いるRAUは普段からできるだけエネルギー消費を抑え、クリーンで再生可能なエネルギーの生産を増やすサーキュラー建築を手がけている。
パビリオンのテーマは「コモン・グラウンド:新たな幕開けの共創」。エネルギーシフト分野での新たな革新的ソリューションが展示される予定だ。パビリオンの球体は昇る太陽をモチーフにしている。人類の新たな幕開けを暗示するパビリオンだ。
設計:RAU
公式サイト: https://orandaexpo2025.nl/ja
■ 北欧館|ミケーレ・デ・ルッキ&AMDL Circle




地熱のアイスランド、水力のノルウェー、洋上風力のデンマークのほか、スウェーデンやフィンランドと再生可能エネルギーの先進国が揃う北欧館。イタリアを代表する建築家・デザイナーのミケーレ・デ・ルッキによるパビリオンは北欧の伝統的な納屋にインスピレーションを得た木造建築だ。使用する木材は日本国内で調達し、万博終了後はリユースする予定となっている。雨は防ぎつつ効率的に風を取り入れ、空調の使用を抑える。
館内では展示施設、イベントやプレゼンテーションなどが行われるカンファレンスセンターがある。ルーフトップテラスのレストランではアニマル・ウェルフェア(動物福祉)に焦点をあてたオーガニック食品など北欧の食材に日本の要素を取り入れ、食品廃棄物ゼロを目指す。デンマーク語で「居心地のいい空間」を表す「ヒュッゲ」やスウェーデンのコーヒーブレイク「フィーカ」など北欧のライフスタイルを体感できる。
設計:ミケーレ・デ・ルッキ&AMDL Circle
公式サイト:https://thenordics-expoosaka.com/jp/home
※会期中、各国ごとに5つのナショナルデーが設定されている。
2025年4月24日:デンマーク、5月14日:スウェーデン、5月29日:アイスランド、6月2日:ノルウェー、6月12日:フィンランド
■ スイス館|マヌエル・ヘルツ・アーキテクツ







地面や壁から大きな泡が出現したように見えるスイス館。基本設計はスイス・バーゼルに拠点を置くマヌエル・ヘルツ・アーキテクツが手がける。このパビリオンは極限まで軽量化されているのが特徴だ。“泡“はETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)の膜でできており、その膜を二層式にして間に空気を充填し、泡の形を保つ。ETFE自体が軽く、100%リサイクル可能な素材だ。万博終了後は家具にアップサイクルされることが決まっている。
二重になった膜の間には構造体として軽量鉄骨が隠されている。この鉄骨も再利用しやすい標準的なものが選ばれた。地中には通常の杭などではなく、こちらも再利用が容易なプラスチックタンクが埋められており、その中に海水や砂を詰めて基礎としている。材料が軽ければ軽いほど運搬の際の二酸化炭素排出量も少なくて済む。徹底して持続可能性を追求している。
基本設計:マヌエル・ヘルツ・アーキテクツ
公式サイト:https://houseofswitzerland.org/events/swiss-pavilion-expo-osaka
■ フランス館|コールデフィー&カルロ・ラッティ・アソシエイツ




1855年のパリ万博など、万博に関して長い歴史を持つフランス。今回のパビリオンはフランス出身のトーマス・コールデフィー率いるコールデフィーと、イタリア出身のカルロ・ラッティ率いるカルロ・ラッティ・アソシエイツが設計した。来場者は立体的に回遊できる遊歩道で屋上庭園まで歩いていくことができる。建築面積のおよそ5分の1は再利用可能な組み立て式モジュールだ。二重になったファサードが外部の暑さ寒さを防ぎ、屋上庭園が太陽の放射熱を吸収、ヒートアイランド現象を抑える。
フランス館では会期を通じて、ルイ・ヴィトンがOMAの重松象平とのコラボレーション、日本とクラフツマンシップにオマージュを捧げた展示を行う。メディアアーティスト、真鍋大度のビデオインスタレーションも展示される。ディオールは代表作の「バー」ジャケットを展示、またデザイナー・アーティストの吉岡徳仁と写真家の高木由利子の作品で空間が飾られる。そのほか期間限定でセリーヌ、ショーメによる特別展示も楽しめる。フランスの「愛」の力を体感できる。
設計:コールデフィー&カルロ・ラッティ・アソシエイツ
公式サイト:https://www.franceosaka2025.fr/ja
■ イタリア館|マリオ・クチネッラ




四角い構築物の中にローマの円形競技場〈コロッセオ〉を模した建物が人々を出迎える〈イタリア館〉。マリオ・クチネッラが設計したパビリオンは正多角形や円形をしたルネサンスの「理想都市」からインスピレーションを得たものだ。パビリオンはピアッツァ(広場)・テアトロ(劇場)・ジャルディーノ(庭園)の3つの要素からなり、万博の終了後はイタリアワークショップなどに使われる。
テーマは「アートはいのちを再生する」。イタリアが誇る芸術や食文化を紹介、オペラやコンサートなどのイベントも企画されている。屋上には古典的な迷宮のコンセプトを現代にアレンジした庭園が作られる。また歴史上初めて、バチカンが出展するのも話題だ。ローマ教皇庁が所蔵する芸術作品が大阪にやってくる。イタリアの美と芸術に浸れるパビリオンだ。
設計:マリオ・クチネッラ
公式サイト:https://www.italyexpo2025osaka.it/
■ サウジアラビア館|フォスター&アソシエイツ






サウジアラビアの砂漠や伝統的な村落を思わせるパビリオンはノーマン・フォスター率いるフォスター&アソシエイツの設計。それぞれの建物の配置は流体力学を応用したシミュレーションで決められた。真夏には西からの涼しい風を呼び込み、4月や10月など気温の低い時期には前庭が北風を防ぐ。
前庭にはサウジアラビアの植物が植えられ、その先の路地を抜けるとパビリオンの中心部である「サウジ・コートヤード」に出る。さらに進むと曲がりくねった小道があり、窓やドアを通じて没入型のコンテンツを楽しめる。雨水のリサイクルや光発電、省エネルギーの照明など環境への配慮も充実したものだ。遠く離れた砂漠の国へと連れていってくれる。
■ 休憩所1 |大西麻貴+百田有希(o+h)

大きな丘のような屋根のある休憩所。来場者は毛皮のような屋根の下、柔らかくめくれあがった部分から中に入る。デッドストックのテキスタイルやテント地などで作られた大屋根はモンゴルのゲルのようでもある。視覚だけでなく触覚、聴覚、嗅覚を刺激する、生き物のような建築だ。
■ ギャラリーWEST|金野千恵(teco)

廃棄された食材や食品の残渣から作られるベジタブルコンクリートを使ったギャラリーWEST。廃棄物だと思われているものを循環させる、“匂いある建築"だ。このギャラリーは2つの異なるサイズの内部空間と、野菜スケールのピースが集積した大屋根の半屋外空間からなる。内外をつなぎながら、多様なアート空間が広がる。
■ ポップアップステージ東内|桐圭佑(KIRI ARCHITECTS)

刻々と姿を変える雲の下で人々が集うステージ。雲は日差しを柔らかく遮り、涼しく心地よい場所を作り出す。ひとつとして同じ形のものはないが、世界中どこでも雲だと認識することができる。多様な形や価値観を内包しながら、ステージと観客が一体感に包まれた場を生み出す。