March 6, 2025 | Design | KASHIYUKA’s Shop of Japanese Arts and Crafts
日常を少し贅沢にするもの。日本の風土が感じられるもの。そんな手仕事を探して全国を巡り続ける、店主・かしゆか。今回訪ねたのは岐阜の〈オゼキ〉。お盆に使われる盆提灯の伝統技術をもとに、優美な「岐阜提灯」を作り続けています。

自然界の美しさを生活に取り入れたい。そんな想いから生まれた伝統工芸が「岐阜提灯」です。美濃地方の和紙や竹で作られた火袋に花鳥風月の絵を施し、月光のような灯りに透かして眺め愛でる。今回は明治17年に岐阜提灯の製造を始めた〈オゼキ〉を訪ねました。

拝見したのは張り・絵付・摺込を担う伝統工芸士さんたちの技。まずは細く裂いた竹ひごを張型にぐるぐると巻き付け、その上に和紙を施す「張り」の工程です。
「4mほどのひごを少量の糊と糸で、60mほどになるまで繋ぎます」と張師の松本秀代さん。糸に結び目も作らず素早く繋ぎ留める、その手つきが本当に美しい。繋ぎ目が竹の節と同じくらい小さく目立たないことにも感動するし、節のかすかな凹凸が和紙を通して伝わることにも愛おしさを感じます。


次に見学したのは火袋の装飾。型に張った無地の和紙や絹に手描きする「絵付」と、張る前に型紙で柄を施す「摺込」の2種類です。

絵付を手がけるのは猪原崇光さん。日本絵画の技を駆使し、凸凹のある曲面に筆を走らせます。100張り、200張りと同じ絵柄を描くのにもかかわらず下描きはナシ。見本となる火袋のひご目を数えながら、絵柄の位置や色、大きさを把握しているのだそうです。
「特徴は灯りに透けた時の濃淡を想像して描くことです。同じ色でも一度でベタッと塗らず、いったん絵具を薄めてから重ねて塗る。そうすることで光の透過を加減でき、絵に立体感が生まれます」

一方、岐阜提灯独特の技法が、型紙と刷毛を使って絵具を摺り込む「摺込」。もとは同じ絵を大量に描くために発案された技ですが、実は驚くほど手数が多いんです。
「例えば桔梗の花びら1枚にも3種の型紙を使い、3回に分けて色を差す。そうやって部分ごとに描いた柄を組み合わせて1枚の絵を作ります。多い時は1つの柄に100枚以上の型を使うんですよ」
そう話すのは摺込師の古川能利子さん。


手元を見ていると、どんなに小さな面積でも力の入れ具合を細かく変え、微妙な濃淡をつけていることがわかります。これもまた、灯りで透けた時に美しく見えるように、という想いから。
この日感じた岐阜提灯の魅力は「柔らかさ」という美しさでした。竹と和紙が生む柔らかな張りも、灯りに透ける草花の絵の柔らかさも、長く守られてきた手仕事の技に支えられているんですね。

岐阜提灯 作/オゼキ
左/手漉き和紙張りの火袋に大輪菊を描いた「本春慶2号」。高さ86cm・桐箱入り330,000円。右/卓上サイズの「クオレ・ルーチェS」27,500円。岐阜県岐阜市小熊町1-18 TEL 058 263 0111。イサム・ノグチと協業した照明《AKARI》でも知られる。かしゆか
音楽ユニットPerfumeのメンバー。『Perfume 10th Tour ZOZ5 “ネビュラロマンス” Episode 1』開催中。日本テレビ系『news zero』水曜パートナー。〈石川県立図書館〉に行きたい。Instagram: @kashiyuka.prfm_p000003