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くるみの木・石村由起子の器コレクションの思い出に迫る本が登場です!

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February 2, 2025 | Culture | a wall newspaper

その暮らし方がメディアで注目を集める石村由起子。彼女が10代から集めてきた器の数々に迫る本が登場です。

右は20代の頃に購入した岩井窯の山本教行のポット。左は長谷川まみの彫金が美しい匙。
右は祖母が愛した淡路島の「珉平焼」。その後、自身でも買い集めた。左は奈良と滋賀の漆器。
ともに収集してきた骨董。

奈良を代表するカフェであり、時代を先駆けて暮らしの道具や器などを紹介してきた〈くるみの木〉。オーナーである石村由起子の優れた審美眼は、さまざまなメディアで紹介されてきた。そんな彼女が暮らしの中で特に大切にするのが器の存在だ。これまでに集めてきた器の一部を紹介する本が刊行される。

石村が初めて器を購入したのは10代の頃。旅館を営む叔母に連れられ、乃木神社で開催される骨董市を訪れたのがきっかけだという。何を買ったらいいか悩む石村に、自分がいいと思うものを信じるように叔母はアドバイスしたという。以降、彼女はその教えを守り続けてきた。

建築家の中村好文による自宅のキッチンカウンター。さまざまな道具の姿が。
使うほどに味わいが深まり、成長し続ける中村友美の作品の数々。
来客が多く、盆に置いた湯呑みを友人たちに選んでもらうことも。

「私はやはり料理が好きなんです。だから器を見るときは、いつも手が料理を添える形になってしまう。ここには白和え、ここには揚げ物がいいかも……なんて料理のことばかり考えて、気がつけばずいぶんと集めてきました。私にとって器は料理がいかに美味しそうに見えるか、が大切。色や風合いとの組み合わせを想像しながら集めてきました」

小さな家を構えるのと同時に膨大な器の整理も始めた。「少しは手放そうとも考えていますが、どうしても使い続けたい器も多い」と言う。現在の住まいの裏に使われなくなった母屋があり、奈良を中心とする若き建築家やデザイナーと改装中だ。器を収納する棚も作り、思うように使える環境を整えているところ。

内田鋼一の作品。重ねられる器が特に好きだとか。
ガラスや竹細工など素材も多様。
付き合いの長短にかかわらず、幅広い世代の作家を紹介する。

「私にとっては用をなすことが何より大切。だからこそそこに美が宿るという言葉には共感しかありません。工芸は生活とともにあるものであり、だからこそ美しさをもたらすものであってほしい」

今やよく知られる作家たちとも、石村は初期から付き合ってきた。時代によって表現が違ってくるのも面白いという。新たなプロジェクトに取り組むように、若い作家とも交流を重ねる。

「こんな年齢なのに、これからのことを考えるとまだまだワクワクしてくるの」

そう笑う石村の尽きることのない好奇心。その原点ともいうべき器のコレクションを紹介する本書は、日本の工芸史の一端とともに彼女の情熱を教えてくれる。

『うつわ』 

石村がこれまでに集めてきた器の数々を美しい写真とエピソードで紹介する。全5章からなり、器に興味を持ったきっかけから若い世代の作家との交流までを取り上げる。写真は奥山晴日が担当。自宅で撮影を行った。1月下旬発売。青幻舎刊。3,300円。

石村由起子

いしむらゆきこ 香川県生まれ。1984年に奈良県奈良市でカフェと雑貨の店〈くるみの木〉を始める。奈良を拠点に地域活性拠点のプロデュースなども行い、奈良市の観光案内施設〈鹿の舟〉、香川県高松市の〈まちのシューレ963〉、滋賀県長浜市の〈湖のスコーレ〉を手がける。

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