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雑誌に絵本…アートディレクター・堀内誠一の膨大な仕事を網羅する大規模個展が〈PLAY! MUSEUM〉で開催。

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January 21, 2025 | Design, Art, Culture | casabrutus.com

東京・立川の〈PLAY! MUSEUM〉にて、2025年1月22日から4月6日まで、希代のアートディレクター・堀内誠一の多彩な活動を紹介する『堀内誠一展 FASHION・FANTASY・FUTURE』が開催される。

『anan』表紙(11号、1970年)平凡出版 ©マガジンハウス
『anan』表紙(47号、1972年)平凡出版 ©マガジンハウス

堀内誠一(1932-1987)は、昭和を代表するアートディレクターとして時代を切り開くとともに、絵本作家、デザイナー、写真家、著述家など、幅広い分野でその才能を発揮してきたクリエイターだ。14歳で伊勢丹百貨店の宣伝課に就職。装飾係としてプライスカード作りから看板、ウインドディスプレイのデザインまでさまざまな仕事を経験し、やがて広告制作会社で雑誌のアートディレクションを⼿がけるようになる。雑誌『anan』においては創刊(1970年)時のコンセプト作りやアートディレクションを⼿がけ、雑誌『BRUTUS』ではロゴマークをデザイン。ヴィジュアル雑誌の⻩⾦時代を築いた。絵本作家としては、1958年に初の絵本『くろうまブランキー』を刊⾏。その後、ひとりぼっちのゾウがさまざまな仕事場で働きながら自分の居場所を探しだす物語『ぐるんぱのようちえん』をはじめ、70冊を超える絵本を世に送り出し、また、挿絵も数多く描いている。1973年から81年にかけては家族と共にパリ近郊に移住。旅⾏記やガイド本なども出版している。

その堀内の大回顧展となる同展は、「FASHION」「FANTASY」「FUTURE」という、「F」を頭⽂字とした3つのセクションで構成される。展示空間は、セクションごとに、有⼭達也、設計事務所〈ima〉、三宅瑠⼈・岡崎由佳と異なるクリエイターが担当。個性が異なる、3つの “堀内誠⼀展”を同時に体験することができる。

『POPEYE』ロゴ(1976年)平凡出版 ⓇHearst Holdings, Inc. ©マガジンハウス
『BRUTUS』ロゴ(1980年)平凡出版 ⓇHearst Holdings, Inc. ©マガジンハウス

「FASHION」展では、アートディレクター、グラフィックデザイナーとしての膨⼤な仕事の中から、堀内が手がけた『anan』創刊号から49号までの特集展示を中心に、堀内のアートディレクションの革新性とダイナミックなパワーを浮き彫りにする。堀内は『anan』を通して、洋服、ヌード、⾳楽、ダンス、会話、⾷べ物、ライフスタイル、旅⾏など、あらゆることがファッションなのだと提唱。⼥性の⽣きる喜びを解放した雑誌づくりは、その後のエディトリアルデザインはもちろん、女性の生き方そのものにも⼤きな影響を与えた。そのほか、雑誌『ロッコール』をはじめとするエディトリアルデザインや多彩なロゴデザインも紹介する。展示空間は、『anan』増刊として発⾏された『ku:nel』のデザインを⼿がけた(2002年の創刊から2015年の75号まで)アートディレクターの有山達也が担当した。

『ぐるんぱのようちえん』(1965年)福音館書店
『ぐるんぱのようちえん』(1965年)福音館書店
『くるみわりにんぎょう』(1968年)偕成社
『雪わたり』(1969年)福音館書店
『てがみのえほん』(1972年)福音館書店

「FANTASY」展は堀内が手がけた絵本の世界をフィーチャー。数ある作品から『くろうまブランキー』『雪わたり』『ぐるんぱのようちえん』(すべて福⾳館書店)、『オズの魔法使い』(世界⽂化社、のち偕成社)など、ファンタジー⾊が強い作品を中心に展示を行う。楕円の展⽰室には⾼さ3メートルもの⼤きな絵本を並べ、また、展⽰室中央には、『ぐるんぱのようちえん』の祝祭的な世界を設置。同作に登場する象のぐるんぱ像に出合える。空間デザインは建築家・インテリアデザイナーの設計事務所〈ima〉が担当した。⼼に漂う世界を描く「ファンタジーのおもしろさ」を⼤切に創作しつづけてきた堀内の、絵本の森が創出される。

《キエフのかえで林》(1982年)
《青い女性像》(1949年)
『いりふねでふね』1号(1974年)草思社
『guide anan パリからの旅』(1981年)平凡出版 ©マガジンハウス
『どうぶつしんぶん』はるのごう(1983年)福音館書店

「FUTURE」展では、秋川リサ(俳優)、⿅児島睦(陶芸家)、佐野史郎(俳優、映画監督)、都築響⼀(編集者)、名久井直⼦(ブックデザイナー)、松浦弥太郎(エッセイスト)など、堀内を敬愛する100人が参加。それぞれが好きな作品をピックアップし、堀内から受け取ったもの、未来へ伝えたい⾔葉とともに展示する。希望に満ちた展⽰空間は、NHK『⻁に翼』のロゴ・メインビジュアルデザインを手がけたデザイナーの三宅瑠⼈と岡崎由佳がデザインした。

そのほか、堀内が手がけた絵本や雑誌に加え、堀内が愛した世界のクリエイターたちの絵本を集めたブックカフェも登場。より絵本の世界に心酔できるオリジナルメニューを提供する。パリや旅のエッセンスを取り入れた雑貨や、絵本のイラストをあしらったアパレル、ステーショナリーなどのアイテムなどの販売も行う予定だ。

今なお影響を与え続け、また私たちの未来への指針さえ示す、堀内の創造性あふれる膨大な作品たち。その中に身を置いたとき、私たちは何を感じるだろうか。

堀内誠一 ほりうち・せいいち。1932年、東京⽣まれ。デザイナー、アートディレクター、絵本作家。『くろうまブランキー』 をはじめ『たろうのおでかけ』『ぐるんぱのようちえん』『こすずめのぼうけん』など 70 冊を超える絵本や、旅⾏記・ガイド本も多数出版。その他の著書に『⽗の時代 私の時代』(マガジンハウス)、編著書に『絵本の世界・110 ⼈のイラストレーター』(福⾳館書店)など。1987年、54歳で亡くなるまで絵本やデザインの仕事に従事した。

『堀内誠一展 FASHION・FANTASY・FUTURE』

〈PLAY! MUSEUM〉東京都⽴川市緑町3-1 GREEN SPRINGS W3棟 2F。1⽉22⽇〜4⽉6⽇。10時~17時、土日祝~18時。⼊場は閉館の30分前まで。TEL 042 518 9625。1800円。2月16日(日)休。


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