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苦難を乗り越え、輪島の塗師・赤木明登と料理人・北崎裕による能登〈杣径〉が“食堂”として再始動!

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December 1, 2024 | Food | a wall newspaper

あの静謐なるオーベルジュが「食堂」として中村好文がリノベーションを手がけた空間で再出発。能登の食を発信し続ける料理人・北崎裕に、今の思いを聞く。

夜のコースより、小菊かぼちゃの炊合わせ。赤木の塗りの器で。
サワラの酒蒸し 能登栗、クルミ、ムカゴ添え。

輪島塗の塗師である赤木明登と料理人の北崎裕が、輪島の集落に日本料理のオーベルジュ〈茶寮 杣径〉を開いたのが昨夏のこと。杣径(そまみち)とは人里離れた山道を意味し、赤木の書斎兼ゲストハウスだった山あいの古民家を建築家の中村好文がリノベーション。漆塗りのバスタブなど無二の空間作りが話題を呼んだが、能登半島地震で甚大な被害を受けて休業。ようやく今年9月、新店舗でレストラン営業がスタートした。

「地元の人や復興支援に来られた方が気軽に入れるランチを始めました。ここは赤木さんが編集室として使っていたもう一つの古民家で、好文さんが震災後すぐにスケッチを描き、準備を進めました。今度は漁港も近い海沿いなので、店名を〈海辺の食堂 杣径〉に」

と北崎料理長。9月の豪雨の爪痕が痛々しく残る輪島で、懸命に日常を続けながらの営業再開。この日も午前中の炊き出し作業を終えてから取材に応じてくれた。

益子の〈スターネット〉から運んだ、物語を繋ぐ重厚な大テーブル。
広縁にはイサム・ノグチデザインのソファが。
デンマーク製家具が能登の家屋に馴染む。
赤木の執筆用の文机がディスプレイ棚に。

北崎の料理は、能登の素材が持つ旨みを活かすため、塩やいしる、味噌など調味料は最小限。砂糖もみりんも使わない。能登の原種の野菜や在来米は、噛むほどに滋味と生命力が溢れ、体の奥に浸透していく。静かだが饒舌な料理だ。

輪島特有の漆塗りの建具が美しい店内には、ガラス作家・有永浩太によるランプシェードや、益子の伝説のセレクトショップ〈スターネット〉からはるばる運び、赤木が黒漆をかけた大テーブルも。そして綺羅星のような作家陣が作る器たち。2人の見立てが行き届く空間のなんと心地いいことか。

「ここは家の前から水面の煌めきが見えるほど海が近くて、気持ちが明るく広がるような場所。料理にも影響するかもしれませんね」

と笑顔で語っていた北崎。現地に足を運び、彼が一皿に込める能登のエネルギーを受け取りたい。

能登の酒造が店のために醸した日本酒も。
鉄製のプレートが目印。

〈海辺の食堂 杣径〉

ランチ2,000円、ディナーはおまかせコース(8〜9品)19,800円(予約制)。石川県輪島市門前町鹿磯1-17 TEL 090 4605 3737。11時30分〜14時30分LO、18時〜19時30分LO。月曜・火曜休。

北崎裕

きたざきゆたか 料理人。国際基督教大学卒業後、名店〈京懐石 吉泉〉で修業を積み、京都のくずし割烹〈枝魯枝魯〉の系列店で料理長に。新潟〈里山十帖〉の総料理長を経て、2023年赤木明登と〈茶寮 杣径〉を創業。

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