November 6, 2024 | Design, Art | casabrutus.com
〈かたがみ〉デザイナーの小玉良行と、グラフィックデザイナーの小林一毅による二人展が、東京・中目黒の古書店〈dessin(デッサン)〉で開催中。ポストカードに描き溜めた作品について聞きました。
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〈かたがみ〉デザイナーの小玉良行が日常の記録を描き溜めた『DAILY RECORD 2023-2024』と、グラフィックデザイナーの小林一毅が街中で目の止まったものの“形”を描き積み上げた『言葉が立ち上がるまえに』。日常を切り取り続けた両者の作品たちが見られる二人展が中目黒の古書店〈dessin〉で開催中だ。
小玉は約800枚、小林は約600枚と合わせて1400枚以上のボリュームで、どちらも葉書サイズの絵を展示。全て原画を展示しており、来場者は実際に手で触れながら一枚一枚鑑賞することができる。
会場構成は小玉自身と、プロダクトデザイナーの有留颯紀が担当。有留のプロダクトや、〈かたがみ〉が本展のために設計した什器が展示に使用されている。
小玉良行 『DAILY RECORD 2023-2024』
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2021年から〈かたがみ〉のプロダクトをデザインしている小玉だが、絵を描き始めたのは2023年からだという。『DAILY RECORD 2023-2024』と題して描いてきたのは「日々の生活の中で心が動くもの」。街中にある自然からデザイナーの椅子まで毎日描き続け、生活のそばにあるものの姿に向き合った800枚が展示されている。自身が見たそのままを描くように意識し、絵を見たときにそのものが目の前に存在し、質感をリアルに感じることが出来るよう努めていると言う。日々の“記録”は個人のSNSにアップしており、生活を追うように作品を覗き見できる。
「〈かたがみ〉の《Post Card Size Frame》という商品があるんですけど、それに向けて小林さんに絵を描いてもらいたいと去年の10月ごろに声をかけたら、ちょうどそのタイミングにポストカードに作品を描きはじめていたと知ったんです。それで、お互いかなりの量の絵を描いているとわかったことから、今回の展覧会が実現しました」(小玉)
「展示にあたり、僕は束ごとに有機物と無機物に分けて並べています。手に取って見たり並べてみたりして鑑賞できるようにしているので、順番が変わってしまっても構わないんですけど、今はその中で自分でも『良かったな』と思えるものを上に並べています。小林さんの絵はポスカで描いているので大丈夫ですが、僕のは鉛筆で描いているものを展示しているので、手が汚れてしまわないように手袋も用意しています」(小玉)
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「この箱は小林さんに向けて収納箱として作ったものを使いました。今回はそれを逆さにして使っていて、蓋の部分がVカットに加工しているので、ピッタリと収まるようになっています」(小玉)
小玉は小林の絵について、「自分の中にすごい入ってくる影響力があって、小林さんの目線になっていってしまうような感覚があります。今回の展示は、お互いに日常で目の留まったものを中心に絵を描いていたんですけど、進捗を共有していくうちに、自分の絵も小林さんの影響が表れていた時期もありました(笑)」と話す。
小林一毅 『言葉が立ち上がるまえに』
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ある日、自身の子どもが外で拾ってきた石を見て「なぜ“この石”が良いと思ったのか」と疑問を持ったのをきっかけに描き始めた、小林の『言葉が立ち上がるまえに』。ものの形がもつ潜在的な印象を追求する、約600枚に及ぶシルエット集だ。
「僕らからすると、“良い”石って何かって考えた時に『綺麗で丸い』とか 『宝石みたいにキラキラしている』とか、ものの良し悪しを判断する“言葉”で道筋を作っているんじゃないかって思ったんです。目でみえる可視光の外側にも色には幅があるように、子供には我々が持っているものとはまた別の、原始的な選択の基準があるのではないかと考えました」(小林)
なるべく目が「勝手に」拾ってきたものを描き続け、意味を介入させずに形としてものを見るという感覚を追求したという。
「スケッチブックをちぎった紙切れとペンをポケットに用意しておいて、散歩中でもランニング中でも、目に止まったものを『あっ』と思ったらその場で簡単にスケッチしていました。ディティールを追ってしまうと、何が自分の目線を奪ったのかという本質が見えなくなってしまう。なので、子供が石を拾ってくる時の選択のスピード感というようなものを参考にしていました」(小林)
有留颯紀《roof》
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今回の二人展の会場展示を担当したプロダクトデザイナーの有留颯紀は、開いた本を被せることで明かりを消せる照明を販売。
「入眠する時に、本に栞を挟んで閉じて、そして部屋の照明を消して寝るという一連の行動を、一つのプロダクトに入れました」(有留)
会場の〈dessin〉は、過去にも小林が個展を開催した古書店。1400枚もの原画に直接触れ、デザイナーが見てきた「目線」をその目で確かめてみてはいかがだろうか。
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展覧会 「小玉良行 小林一毅」
〈dessin〉東京都目黒区上目黒2-11-1。入場無料。13時〜18時(火曜休)。〜2024年11月17日。小玉良行『DAILY RECORD 2023-2024』と、小林一毅『言葉が立ち上がるまえに』を同会場で展示。小林一毅(こばやし・いっき)
グラフィックデザイナー。折り紙遊びから着想を得たブックエンド《オスモー》などの立体作品も手がける。女子美術大学、多摩美術大学非常勤講師。
小玉良行(こだま・よしゆき)
1991年東京生まれ。線画家。〈かたがみ〉デザイナー。2023年より絵を描き始める。日々生活する中で心が動いたものを、鉛筆で描いている。対象には植物や動物、デザイナーズ家具などさまざま。
有留颯紀(ありとめ・さつき)
プロダクトデザイナー。多摩美術大学統合デザイン学科卒業。プロダクトを中心に、機能だけでなく面白さを大切にしたデザインを制作。