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エルワン・ブルレックが国内本格上陸の〈ラーウィー〉で 新作デザインを発表|小西亜希子の北欧デザイン通信

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October 7, 2024 | Design | casabrutus.com

6月にデンマーク・コペンハーゲンで開催された『3daysofdesign』で発表された〈raawii(ラーウィー)〉のコレクション。その中でも注目の新作は、エルワン・ブルレックがデザインを手がけた同ブランド初となるラウンジチェアだ。今年から日本でも本格展開をスタートしたばかりの注目ブランドの概要と、エルワン・ブルレックの近況も兼ねたインタビューをお届けします。

『3daysofdesign』で発表された《ARBA Lounge Chair》。アルミダイキャストとプライウッドで構成され、〈ラーウィー〉としては初のラウンジチェアだ。

〈raawii(ラーウィー)〉は2017年にニコライ・ウィグハンセンとボー・ラーハウグ・ラスムッセンによって設立されたデンマークのデザインブランド。ブランド名の〈ラーウィー〉は、2人の姓の頭文字から名付けられ、カラフルで美しいフォルムの花瓶やボウルなど、主に陶器製品を中心に展開。現代的でアップテンポなデザインを伝統的な手法で生産しており、ミニマムでありながら暖かみを感じる製品が多い。日本では今年の5月から〈NOMAD〉が総代理店となり、国内で本格展開をスタートしている。

左下:《Coffee Thing(Tropical Blue/Red)》93,500円、右下:《Stringer/TABLE》154,000円、《Pipeline/Large Mirror(Blue)》96,800円、《Pipeline/Coat Rack(Red)》28,600円。

設立者の一人、ニコライはデザイナーとしてイケア やフリッツ・ハンセン、フラマなど数々のブランドと協働。エルワン・ブルレックとは旧知の仲であり、いつか一緒に仕事をしたいと考えていたという。2023年のミラノ・サローネで会った時に〈ラーウィー〉としての今後の方向性をエルワンに相談した際、エルワンの方から家具の分野を拡げることを提案され、その場で新たな椅子を作る方向性が決定した。プロフェッショナルなデザイナー同士、スピーディーにプロジェクトは進んで行った。

●エルワン・ブルレックにインタビュー

持ち前のデザインフィロソフィーは健在。

──〈ラーウィー〉との協働、新しい作品の経緯についてお聞かせください。

〈ラーウィー〉は以前からもちろん知っていて、小さい規模ながらまだまだポテンシャルのある企業だと感じていました。ニコライから相談を受けた時、元々セラミックの小物が多いブランドだったので、例えばそのセラミックを生産する時と同じロジスティックのミニマムさで、フラットパックで輸送できる、少ないパーツで構成された椅子を作ってみるのが面白いんじゃないかと思いました。あくまでもブランドとして今まで行ってきた規模や手法と同じ系譜上で進化させることが重要で、アイデンティティでもあると感じたんです。

ビビットなカラーリングが目を引く。幅広いプライウッドの座面と背もたれを支えるV字に成形されたフラットな金属は座ってみると適度にしなり、驚くほどに快適な座り心地。デザイン性の高さと機能面の双方が見事に調和している。

──《ARBA Lounge Chair》について、教えてください。オフィスチェアのような、リビングチェアのようなコンテンポラリーな新作ですね。

椅子を作ることが決定してから、このプロジェクトは本当に素早く色々なことが決まっていきました。自分が培ってきたメソッドをシンプルかつ純粋に、そして幾らかのラフさも入れて表現したいと思いました。

この椅子は構造がとても簡単で、背もたれと座面を2つのプライウッドパーツで構成し、クロスさせたダイキャストのアルミニウム素材でベースを作っています。これまでのデンマークにある素晴らしい木製の家具や美しいキャンドルホルダーなどのスタイルに、もっとポジティブでエネルギーのあるカラーやディティールを加えることで新たな楽しさを出せればと。少ないリソースではありましたが、遊び心を持って実験しながら作り上げていった感じです。

《ARBA Lounge Chair》は、シンプルでありながら洗練されたデザインで、2つの成形合板パーツとクロスのように組み合わされたフラットな曲げ金属の構造、そしてダイキャストアルミニウム製のベースで構成されている。実際に座ると幅広いプライウッドの座面と背もたれを支えるV字に成形されたフラットな金属が適度にしなり、脚部はスイベル機能によって360度回転するという、機能面としても驚くほどに快適な座り心地だ。

デザイン面でも精密に作られた工業製品の存在感と、ビビッドな配色バランスが絶妙に調和しており、機能性と芸術性を併せ持つデザインを真骨頂とするエルワンの技量あってこその椅子なのだと実感させられる。

コンピューターコーディングの世界観を表現した、詩的で独特な作品。

──会場ではドローイングの作品も展示されていますね。

今回のために制作したという訳ではないのですが、ペインティングとドローイング、2つの作品を展示しています。エキシビションが決まって会場の空間構成を考えた時、単なるプロダクトだけではないコントラストを作りたかったということもありました。

コンピューターコーディングを描いた作品は、常に変化し続ける世界、自分自身、そして世代ごとに異なるレイヤーで無限に広がる情報が、相互作用を通じて影響し合うインタラクティブな要素を含んでいます。混沌としたカオスの中にバランスを見出した形というか。これは、メタルを溶接して繋いでいく作業にも似ていて、コーディングも表現するためのツールの一つと言えます。問題の解決策を模索するようなプロセスで、あまり考えすぎるよりも作ることに没頭していますね。ただ、これをアートとは捉えていません。この作品も展示が終わったら丸めてどこかに保管されるようなもので、マップ(地図)みたいな感じ。たった今、ふと思いついたのですが、今後はこれらの作品を「マップ」と呼ぼうと思います(笑)。

日本ではNOMADが輸入代理店となり、年内発売開始予定の《ARBA Lounge Chair》。

── 近況についても、教えてください。

以前はロナンと一緒に、強固な信頼の元にハイレベルなパフォーマンスを長い間発揮し続けてきました。しかし、ポジティブな面もそうでない部分も含め、エネルギーを多く消耗する中で、現在は自分とスタッフたちで新たな活動を始めていて、ヘイやヴィトラを始めとする様々なプロジェクトに取り組んでいます。例えばコーヒーカップをデザインする際、飲むための機能性はもちろんですが、背景には誰かをウェルカムと招いてコーヒーを一緒に楽しむというポジティブな要素がありますよね? このポジティブさをデザインに反映させるために、今はスタッフたちと信頼関係をしっかりと築き、デザインをしていく上での素地を大切に育てていきたいと考えています。

そして最近は韓国で仕事をする機会がとても増えていて、若い人のエネルギー、ファッション、アクティビティ、どれも新鮮な刺激を受けています。クールな場所に簡単にアクセスできる点も魅力ですね。パリに家族がいるからあまり頻繁には出歩けないけれど、またいつか日本にもぜひ。これからも、未知のジャングルに足を踏み入れ、何かを探し求める旅のように、素材やデザインと向き合って行きたいと思っています。

これまでにも機能的かつ芸術的な作品を数多く発表し続けてきたエルワン・ブルレック。新境地を迎えた今後もますます目が離せない。エルワンと協力して新たなフェーズへと向かう〈ラーウィー〉も、北欧の次世代ブランドとして期待大だ。

エルワン・ブルレック

1976年生まれ。工業と非工業の間を柔軟に横断しながら、オブジェから家具、インテリアまで、錚々たる企業から小規模なメーカーまで広い範囲で製品を発表。長年、兄のロナン・ブルレックと共に「ロナン&エルワン・ブルレック」というデザインデュオを結成し活動していたが、数年前から単独で活動をスタート。現在はパリとブルゴーニュにあるセカンドホーム兼スタジオを拠点とし、新たなチームでクリエイティブワークを行っている。

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