September 19, 2024 | Art | a wall newspaper
東京国立博物館のコレクションと現代美術作家、内藤礼がコラボレーション。普段は見られない特別な空間が生まれます。
土器や絵画など12万件余りのコレクションを誇る〈東京国立博物館〉。アーティスト、内藤礼がその中から選んだものと彼女の作品を組み合わせた展覧会を開いている。いつも場と敏感に呼応するインスタレーションを見せる内藤だが、今回は本館・平成館の3か所が選ばれた。中でも「本館特別5室」は窓から自然光が入る建物完成時の設えとなっている。通常はシャッターが下りているため、見ることができない光景だ。
セレクトされた同館の収蔵品の中には2、3歳ぐらいの小さな子どもの足形がある。
「親が、亡くなった子どもの足形をとったものではないかと言われているものですが、その想いは私たちと変わらないと思います。でも今の時代の私たちとはまったく違うことを思っていたかもしれない。同じことと、想像が及ばないこととの両方があるんです」
この足形が入っているケースにはスフレビーズが入った瓶と、丸い大理石が置かれている。スフレビーズの数は3年という年月を日数に換算したものだ。
「そのビーズの数の少なさに驚きました。3年でこれだけなら、60年、90年生きてもほんの少しにしかならない。でも大理石は2億年以上前に海で堆積した生き物の遺骸が、のちに地中で結晶化し変質したものです。その長い時間が3年という短い時間のそばにいてほしかった」
この足形を作ったのは「先に生まれて、生きて亡くなった人。太古の人々が見たものと同じものを私たちは見ている」と内藤は言う。遙か遠くにいると思えた人とつながっていることを感じさせる。