Quantcast
Channel: カーサ ブルータス Casa BRUTUS |
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2761

内藤礼が見出す「地上の生」が歴史と呼応する。〈銀座メゾンエルメス〉での展示もはじまりました。

$
0
0

September 19, 2024 | Art | a wall newspaper

東京国立博物館のコレクションと現代美術作家、内藤礼がコラボレーション。普段は見られない特別な空間が生まれます。

本館特別5室。両脇の窓は通常はシャッターが下りていて、床に絨毯が敷かれるなど、本展とは部屋の様子がまったく違う。床には東京国立博物館の収蔵品などを収めたケースが、壁には絵画《color beginning/breath》が並ぶ。

土器や絵画など12万件余りのコレクションを誇る〈東京国立博物館〉。アーティスト、内藤礼がその中から選んだものと彼女の作品を組み合わせた展覧会を開いている。いつも場と敏感に呼応するインスタレーションを見せる内藤だが、今回は本館・平成館の3か所が選ばれた。中でも「本館特別5室」は窓から自然光が入る建物完成時の設えとなっている。通常はシャッターが下りているため、見ることができない光景だ。

セレクトされた同館の収蔵品の中には2、3歳ぐらいの小さな子どもの足形がある。

窓から外の緑が見える本館1階ラウンジには《母型》が。

「親が、亡くなった子どもの足形をとったものではないかと言われているものですが、その想いは私たちと変わらないと思います。でも今の時代の私たちとはまったく違うことを思っていたかもしれない。同じことと、想像が及ばないこととの両方があるんです」

この足形が入っているケースにはスフレビーズが入った瓶と、丸い大理石が置かれている。スフレビーズの数は3年という年月を日数に換算したものだ。

ともに《無題》。右はマケドニア産の大理石、左はスフレビーズが入った瓶。縄文時代の「足形付土製品」のケースに置かれている。

「そのビーズの数の少なさに驚きました。3年でこれだけなら、60年、90年生きてもほんの少しにしかならない。でも大理石は2億年以上前に海で堆積した生き物の遺骸が、のちに地中で結晶化し変質したものです。その長い時間が3年という短い時間のそばにいてほしかった」

この足形を作ったのは「先に生まれて、生きて亡くなった人。太古の人々が見たものと同じものを私たちは見ている」と内藤は言う。遙か遠くにいると思えた人とつながっていることを感じさせる。

『内藤礼 生まれておいで 生きておいで』2024年 | 銀座メゾンエルメス フォーラム展示風景。撮影:畠山直哉 / Courtesy of Fondation d'entreprise Hermès 2025年1月13日まで。

『内藤礼 生まれておいで 生きておいで』

〈東京国立博物館〉東京都台東区上野公園13-9 TEL 050 5541 8600。〜2024年9月23日。9時30分〜17時(入館〜16時30分)。月曜休(9月23日は開館、翌火曜休)。観覧料1,500円。 〈銀座メゾンエルメス フォーラム〉東京都中央区銀座5-4-1 TEL 03 3569 3300。〜2025年1月13日。12時~19時。水曜、10月24日休。入場無料。

内藤礼

ないとうれい 1961年生まれ。「地上に存在することは、それ自体、祝福であるのか」をテーマに制作。主な個展に『うつしあう創造』(金沢21世紀美術館、2020年)『breath』(ミュンヘン州立版画素描館、2023年)など。恒久設置作品に《母型》(豊島美術館、2010年)など。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 2761

Trending Articles