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“時間を彫る”アーティストデュオ、Nerholの17年間を振り返る展覧会とは?

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September 19, 2024 | Art | a wall newspaper

田中義久と飯田竜太によるアーティストデュオ、ネルホルが公立美術館初となる大規模個展を開催中。見どころを聞きました。

ネルホル 2007年、グラフィックデザイナー・田中義久(右)と彫刻家・飯田竜太(左)によって結成されたアーティストデュオ。二人の対話を元に田中がアイデアを練り、飯田が彫るというスタイルを取る。写真と彫刻を組み合わせた独自の表現を通じ、時間と空間に深く関わる多層的な探究を続けている。「VOCA賞2020」大賞を受賞。主な展示に『Tenjin,Mume Nusa』(太宰府天満宮宝物殿/2024年)、『Beyond the Way』(レオノーラ・キャリントン美術館/2024年)などがある。

人物や植物の連続写真を何十枚も積み重ね、それに彫刻を施した作品で知られるネルホル。アート業界やデザイン好きの間ではすでに広く知られた存在だが、〈千葉市美術館〉で開かれている大規模個展は、これまでの重要作や未発表作、新作を網羅した、いわば“自己紹介”的な展示だという。そして、千葉市ならではの作品制作にも取り組んだ。

「土地にまつわる作品を残したいという思いがあって、市内をリサーチしたところ、市の花に認定されている“オオガハス”を知りました。ハスはインドから大陸を渡り、日本に定着した帰化植物。本来の自生地から人間の活動によって運ばれ、野生化した植物には膨大な時間が内在していることが感じられ、自分たちの作品にふさわしいと感じました」(田中)

コデマリを動画で撮影し、一カットずつ分割し、重ねて彫った作品《Spiraea cantoniensis》。

時間は二人にとって重要なコンセプトだ。今回は〈千葉市美術館〉が保有する江戸絵画や近代版画などから現代までの作品コレクションからネルホルが選出した収蔵品とのコラボ展も同時開催。両展がグラデーションのように繋がり、過去と現在を往還するような感覚を味わえる。また、『水平線を捲る』という本展のタイトルには二人が考える、時間に対する思いが込められている。

「水平線は視界の限界を指す言葉で、物質としては存在せず、捲ることができません。時間も同じで、年、月、日といった単位で区切ったり、日の出と日の入りといった自然現象から時間の流れを把握しますが、本来は捉えることが難しい。昨日の自分も今日の自分も何も変わらないように感じますが、時間は常に動き続け、その間に人間は大小様々な変化をしています。僕たちはこれまで、瞬間を映し出した写真を何十枚と重ね、彫るという表現方法だったり、珪化木を用いて、時間の積層や断面を可視化し、時間の流れを感じられる作品を提示してきました。今回の展示を通して、時間に対する理解がより深まり、今を生きるこの瞬間が無限の時間の中でどのような意味を持つのか、考えるきっかけになればうれしいです」(飯田)

二人が作品で扱っている珪化木。一見すると石のようだが実際は木。地層に閉じ込められた樹木が珪酸などを取り込み、化石化したもので、こちらも時間の積層を感じさせるモチーフだ。

「Nerhol 水平線を捲る」

美術館の8階から7階で企画展と『Nerhol展関連 コレクション展』を同時開催。1階のさや堂ホールでは「蓮(オオガハス)」をテーマにした大規模なインスタレーションを展開。蓮を刷り込んだ和紙で作られた作品が登場するなど、美術館でしか観ることができない空間演出にも注目だ。展示計画は建築家の西澤徹夫が協力。現代美術家・施井泰平率いるスタートバーンが提供するNFTを実装し、アートとテクノロジーの融合も体験できる。〈千葉市美術館〉千葉県千葉市中央区中央3-10-8 TEL 043 221 2311。〜2024年11月4日。10時〜18時(金・土〜20時)。月曜休。1,200円(金・土の18時以降は半額)。同チケットで5階での常設展示室『千葉市美術館コレクション選』も鑑賞できる。

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