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【あの人の仕事場から学ぶインテリア / Case01】自らの建築哲学を表現する、色と思考の実験場

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September 1, 2024 | Design, Architecture | あの人の仕事場から学ぶインテリア

クリエイターたちが、その創作哲学を表現する空間には、真似したいインテリアのアイデアが詰まっています。発売中の特集『仕事場とインテリア。』より、色使い、DIY、収納など、仕事場を形づくる独自の視点に迫ります。 全6回にわたる本企画の第1回は、自らの建築哲学を色にまとわせた空間で注目される建築コレクティブ〈ウルトラスタジオ〉。そのアトリエはまさに、色と思考の実験場でした。

●人の感情に働きかける色使い。|ULTRA STUDIO 向山裕二・上野有里紗・笹田侑志(建築家)

マンションの一室をリノベーションしたアトリエは、縦長の空間を色で分節する。スタッフとともに塗装や造作家具の製作を行いながら、プロジェクトの検証に役立てている。

色の組み合わせによってアトリエの要素を分ける。

向山裕二さん、上野有里紗さん、笹田侑志さんからなる設計事務所〈ウルトラスタジオ〉のアトリエで、空間を分節するのは色の存在だ。彼らはそこで仕事場が持つ人格を表現したという。キッチンから広がる赤は「欲望」、ミーティングスペースの青は「知性」、デスクの黒は「集中」、作業スペースのベージュは「制作」を意味する。ただし黒いデスク奥には黄色の棚も設置し、彼らが参照元とするヘリット・トーマス・リートフェルトなどが赤青黄の三色を多用することへのオマージュとしている。これらの色が交じり合うのが、ミーティングスペースに置く自作のテーブルだ。イタリアの伝統的な工法を参照した天板は石膏と顔料を混ぜ合わせて模様を削り出す疑似大理石仕上げで、ここにすべての色が現れる。彼らは色を装飾的なものと捉えているという。

ファミリー向けマンションの一室を改修した空間はほとんどの壁を取り除いたが、キッチンなどの一部既存を活用。かつての空間性を継承している。

「色は空間という大きな形状に対して、人間がより愛着を持つ手がかりだと考えています。特にこの色使いはモダニズム前後に使われていたものの再解釈。本来、色はもっと人間に働きかける要素であったと考えています。塗装も可能な限り、自分たちで。サンプルも手作りし、色の組み合わせや狙いを検証します。ただ色番号を指定するのではなく、目で見て、手で触れ、塗ったものが建築として立ち上がる感覚を大切にしています」

彼らの手元にサンプルが増えるほど、色への知見は広がっていく。さらにアトリエも変化を続け、最近改装を終えたばかりのミーティングスペースは新たに加わったスタッフに設計を任せた。

デスクまわりは黒、書棚は鮮やかな黄色に塗った。

「自分が使う空間を自分で設計し、自分で色を塗る。そういう経験を通し、人や素材の寸法、予算内で収める方法を体感してもらいます。多少の失敗は大丈夫ですし、色も少し違うとなれば塗り直せる。ウルトラスタジオが目指すのは伝わる空間であり、大衆性のある空間。色はやはり空間と人をつなぐ存在であり、直感的に感じられる魅力は人々が空間に抱く愛着にもつながります」

彼らは建築的な哲学を深めつつ、それを届ける手段として色を検証し続ける。ワークスペースはその実験場としてこれからも進化していく。

ウルトラスタジオ

向山裕二、上野有里紗、笹田侑志により結成。それぞれに国内外での経験を重ね、2018年より東京を拠点に活動する。建築、インテリア、インスタレーションなど多岐に活躍。



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