August 12, 2024 | Art | casabrutus.com
開館55周年記念として、長年愛されてきた足湯が、トラフ建築設計事務所と園田慎二建築設計事務所により、リニューアルオープン。また2024年に逝去した舟越桂が最後まで企画に携わった展覧会も開催されています。
日本初の屋外彫刻美術館として開館して55年。箱根の〈彫刻の森美術館〉にて〈森の足湯〉がリニューアルオープン。敷地の一番奥にあり、様々な彫刻作品を鑑賞した後の憩いの場でもあった足湯を森側に開き、インフィニティに。
「彫刻の森という名前の通り、森を感じられるように足湯に入りながら、敷地の外の箱根の手付かずの自然を見られるように設計しました。また段差があったランドスケープを見直し、勾配をなくすことで、広場のような空間になり、隣にあるカフェの建物との関係も格段によくなりました」(トラフ建築設計事務所)
〈森の足湯〉は、彫刻の代表的な素材のような原石の迫力や魅力が感じられるデザインだ。隣接するカフェの2階には2020年にトラフ建築設計事務所が手がけた多目的休憩スペース〈丸太広場キトキ〉があり、ここでは杉の丸太が家具のような彫刻のような光景を作っている。
「配置した石は世界を旅してきたような文字がスプレーで書かれていたり、割り出した際の道具の跡が残るものも。どの石の上に座るか選ぶ楽しみもありますし、石の質感や温度を足で感じてもらいたいです」(トラフ建築設計事務所)
足湯をはじめ、手軽に温泉を楽しめる手湯、新たに車椅子の方にも配慮した席が用意され、ユニバーサルに対応している。利用料無料もうれしい! 箱根らしい温泉×アートの新スポットだ。
「柔らかな木の座布団がひとりひとりの場所も決めてくれ、ゆっくりと足湯を楽しむことができます」(トラフ建築設計事務所)
舟越桂は、遠くを見つめるまなざしを持った静かな佇まいの人物像で知られる彫刻家だ。開館55周年記念の『舟越桂 森へ行く日』展が本館ギャラリーにて開催されている。
この展覧会は2023年3月、舟越桂に依頼したことから企画が始まり、準備が進められてきたが、2024年3月29日に舟越が逝去したため、最後まで企画の実現を望んだ作家本人の意思と、ご遺族の意向を尊重し、開催されている。
生涯を通じて、人間とは何かを問い続けた舟越桂の作品の変遷とその創作の源となる視線に迫る展示となっている。立体22点、平面35点、資料の充実した展示内容だ。
また『舟越桂 森へいく日』展の関連として、舟越桂とゆかりのある現代作家の作品を選りすぐり展示する『名作コレクション+舟越桂選』展(〜12月1日)が開催されている。現代へと続く、彫刻の展望を見ることができる機会となっている。
20世紀を代表する彫刻家ヘンリー・ムーアは「彫刻の置かれる風景として空以上にふさわしいものはない」と屋外に作品を展示することを好んだ。
「…ひとたび野外に出て陽を浴び、雨に打たれ、雲の移りゆきを感ずるときには、彫刻も生活の一部であるということがよくわかる…」(ヘンリー・ムーア)
ムーアから彫刻の森美術館の国際公募展「ヘンリー・ムーア大賞」創設時(1979年)に寄せられたメッセージがそのまま、美術館の指針にもなっているという。屋外に出て、自然を感じながら様々な彫刻作品に触れ、最後に足湯で箱根の森とつながる。ここでしかできない体験ができるのだ。