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奇才・田名網敬一の活動を「記憶」をテーマにひもとく。

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July 25, 2024 | Art | casabrutus.com

日本を代表するアーティスト、田名網初の大規模回顧展『田名網敬一 記憶の冒険』が、8月7日から11月11日まで、〈国立新美術館〉にて開催される。

《彼岸の空間と此岸の空間》2017年

田名網敬一、87歳。類い稀なる色彩感覚で独創的な世界観で世界的に知られるアーティストだ。その礎にあるのは、幼少期に経験した戦争の記憶と、戦後に触れたアメリカ大衆文化だという。デビューから変わらぬスタイルで今も旺盛な創作活動を続け、近年は自身の過去の記憶や夢を主題とした作品を数多く制作している。

田名網は武蔵野美術大学デザイン科卒業。同窓に篠原有司男、赤瀬川原平、荒川修作らがいる。在学中からデザイナーとして仕事を始め、博報堂を2年で退職した後、メディアを限定しないアンディ・ウォーホルの制作方法に大きな刺激を受ける。その後は自らを「イメージディレクター」と名乗り、シルクスクリーンによるポスター、コラージュやアニメーション、イラストレーションや絵画など、ジャンルを問わず幅広く手がけるようになった。

《1967 東京》1967

また1960年代後半からは多くの雑誌のエディトリアルデザインを手がけるようになり、1975年には日本版月刊『PLAYBOY』の初代アートディレクターに就任した。

『田名網敬一 記憶の冒険』は、そんな田名網の初となる大規模回顧展だ。60年以上におよぶ活動を包括的に捉え直し、「記憶」というテーマのもとにひもといていく。デザイナー、実験映像作家、さらにアニメーション作家、アーティストなど、ジャンルを横断した類まれな創作活動により他の追随を許さない地位を築いてきた田名網の作品世界を体感できる貴重な機会となる。

見どころは大きく3つ。アンディ・ウォーホルから影響を受けた「ORDER MADE!!」シリーズ(1965)や、ベトナム反戦ポスターコンテストに入選した「NO MORE WAR」シリーズ(1967)など、日本の戦後文化史と密接に結びついた作品を紹介。

《ORDER MADE!!》1965

また、「記憶」をテーマに、未発表の新作に加え、70年代から断続的に記録してきた夢日記やドローイング、関連するインスタレーションを展示し、尽きることのないその創造力の源泉に迫る。

《金魚》1982年

そして、ファッションブランドやミュージシャンとのコラボレーション作品を通して、デザイナーとしての活動にも光を当てる。

「RADWIMPS WORLD TOUR 2024 “The way you yawn, and the outcry of Peace”」のためのアートワーク、2024年

また、コロナ禍に描いた約500点以上にも及ぶピカソの母子像や、仏像に着想を得た立体などの近作も展示する。

《ピカソ母子像の悦楽 No.024》2020 / 2021年
田名網敬一《死と再生のドラマ》2019年

幼少期の戦争や生死を彷徨った大病の経験を大きなきっかけとし、「人間は自らの記憶を無意識のうちに作り変えながら生きている」という説に基づいて、自身の脳内で増幅される「記憶」を主題に創作活動を続ける田名網。虚実が入り混じる記憶のコラージュのような作品世界を存分に堪能できる、待望の回顧展となるはずだ。

「パラヴェンティ:田名網 敬一」プラダ青山店、東京、2023年

『田名網敬一 記憶の冒険』

〈国立新美術館〉企画展示室1E 東京都港区六本木7-22-2。2024年8月7日~ 11月11日。10時~18時。金・土曜は20時まで。入場は閉館の30分前まで。2,000円。火曜休。

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