$ 0 0 February 18, 2017 | Vehicle, Architecture | Driven By Design | photo_Tatsuya Mine text_Hiroki Iijima 後輪駆動の新しいルノー・トゥインゴに乗って向かうは、最高裁判所などを設計した岡田新一が晩年に手がけた図書館。運転の楽しさをたっぷりと味わって、東名道を走りました。 建物裏側の左端に「月」の塔。手前に流れる天白川に面した静かな佇まいだ。右奥の「明けの明星」までの間には中庭のテラスがあり、市民の憩いの場として図書館の特徴のひとつともなっている。 平坦な2階建ての四隅にカラータイル張りの塔が設けられ、遠くからでもよく目立つ。設計者の岡田新一は最高裁判所や警視庁庁舎などを代表作に各地の病院や学校などを手がけただけに、この図書館も内部は整然と機能的につくられていて、施主である市の意向と利用者の市民の思いを過不足なく実現していることが伝わってくる。四隅の色鮮やかな塔は、一目でわかるような強いシンボル性を、という市の強い依頼を受けた結果生まれたものだという。入口のすぐ隣には「太陽」を象徴する黄色の塔、建物正面を経て右端に「宵の明星」のグレー塔、建物裏側にも濃紺の「月」とグレーの「明けの明星」の2つの塔が配されている。天体のモチーフというのは、ギリシャの哲学やアラビアンナイトなど文化、教養の世界に似つかわしいのかもしれない。岡田は最高裁を設計する際に重厚な花崗岩を多用して威厳の象徴としたというが、ここでも図書館の象徴性を押さえていたわけだ。 一般開架室。トップライトから柔らかな光が入る。 月の塔の内部は学習室。取材時には受験を控えた中高生でいっぱいだった。 トゥインゴのキャンバストップを開けて見える室内。ポップな配色と、必要最小限の機能性が特徴。 都内から日進市まで約320kmのドライブには、ルノー・トゥインゴを選んだ。愛嬌のある顔つきに目が行くが、リアエンジン・リアドライブ(RR)車であることが最大の魅力だ。フロントエンジン・フロントドライブ(FF)車が前輪に駆動と操舵の役割を課しているのに対し、RR車は前輪は操舵だけ、後輪は駆動だけの役割分担。その分ハンドル操作がナチュラルになる。FF車だとカーブを曲がりながらアクセルを踏んで駆動力を変化させると、操舵力や保舵力に影響を与えてしまう。つまり曲がろうとする気持ちに素直に応じてくれない感じがするのだが、今回のようなRR車に乗ると、ハンドリングの真のナチュラルさに驚かされる。カーブに入るときの操舵感の無理のなさ、さらに曲がりながらアクセルを踏み増していくときの気持ちよさをダブルで感じることができるのだ。ここ30年くらいは「小型車はFF」というのが揺るがぬ業界標準であり続けたが、このクルマに乗るとRR方式がこんなにもドライバーを幸せにするものだったかと再確認させられる。これを機に小型実用車界でRRを見直す動きが始まると面白いし、大いに嬉しい。 建物正面の角、エントランス部分に太陽の塔がある。 巡礼車:ルノー・トゥインゴ INTENS Canvas top 3気筒900㏄のターボエンジンと6速ツインクラッチ式ATの組み合わせだが、車重約1トンと軽いため驚くほど元気によく走る。高速道路でもストレスなし、その上コーナリングが大得意。ただしRRはフロントが軽いので横風にはそれなりに注意が必要だ。1,990,000円(ルノー・コール TEL 0120 676 365)。 巡礼地:日進市立図書館 設計/岡田新一設計事務所。2008年10月1日開館。日進市は市民の平均年齢が約41歳、10〜20代の人口比も高い自治体だが、幼児期から図書館に慣れ親しんでもらおうと、赤ちゃん対応の取り組みも積極的に行っている。市内に大学が6校あるので学生の利用率も高い。愛知県日進市蟹甲町中島3番地 TEL 0561 73 4123。