Quantcast
Channel: カーサ ブルータス Casa BRUTUS |
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2781

古今東西 かしゆか商店【つづら】

$
0
0

June 6, 2024 | Design | KASHIYUKA’s Shop of Japanese Arts and Crafts

日常を少し贅沢にするもの。日本の風土が感じられるもの。そんな手仕事を探して全国を巡り続ける、店主・かしゆか。今回の訪問先は東京。呉服の町として栄えた日本橋人形町で、着物をしまう美しい箱「つづら」の職人と出会いました。

「着物を湿気や虫から守る衣裳箱は東京で生まれたんですね」とかしゆか店主が訪れたのは、東京で唯一つづらを作っている〈岩井つづら店〉。約160年前にかご屋として創業、つづら製作を始めて4代目の岩井良一さんと。

祖母から譲り受けた着物を楽しむようになったのは数年前から。そろそろ箪笥が必要かなと思っていた時、つづらの存在を知りました。

「つづらとは、竹を編んだかごに和紙を貼り、柿渋や漆を塗って仕上げた蓋付きの箱。元禄時代に葛籠屋甚兵衛という江戸の商人が考え、明治以降は庶民の間でも着物をしまうのに使われました」

そう話すのは日本橋人形町の甘酒横丁に店を構える〈岩井つづら店〉4代目の岩井良一さん。

Purchase No. 73【つづら】竹と和紙と漆で作る江戸生まれの衣裳箱。

「戦後は関東に250軒ほどつづら屋がありましたが、洋服中心の時代になって需要が減り、今、東京ではウチだけ。ただ、若い方の和装ブームもあって、興味を持ってくださる方も増えているんです」

確かに現代の住宅やマンションでも取り入れやすいサイズ感。着物の大敵になる湿気は竹や和紙が吸収してくれるし、漆も呼吸する素材なので通気性が保たれます。

和紙を貼ったつづらを乾燥中。1週間で5~6個作る。

「つづら作りは分業制。職人が編んだ竹かごを仕入れ、手漉き和紙を貼るところから始めます。大きなつづらや傷みやすい角の部分には、丈夫な蚊帳生地を裏打ちした和紙を使うんですよ」

と岩井さん。貼った和紙の上にふのりを塗り、竹櫛を当ててジャッジャッジャッと力強くこすります。編み目が浮き出るくらいまで竹かごと和紙をなじませたら、1~2日ほど乾燥。柿渋を施した後にようやく漆塗りの作業です。これまでに見てきた漆工芸は何度も塗り重ねて艶を出していましたが、つづらは1回だけなのだとか。

「刷毛などの道具もきれいですね」とかしゆか店主。

「塗り重ねると編み目が消えてしまいますから。竹かごの凹凸を残しながら、広い面を一度できれいに塗る。そこが難しいですね」

仕上がったつづらの軽さにも驚きました。大きいサイズでも軽々持てる1kg前後。傷んだ場合は貼り直しや塗り直しができるのも、手仕事のいいところです。

竹かごに貼るのは埼玉の小川和紙。

「和紙を貼るでんぷん糊は水に浸ければきれいにはがれるので、竹の修理もしやすい。きちんと手入れすれば一生使えます」

接着剤で貼ったものと違い、昔からのやり方なら、貴重な素材を傷めることなく直せるんですね。

「納品まで3~6か月。待つ間も楽しみ」。

「何度も直して使ってくださる方もいます。修理を依頼されるのはうれしいですよ」と話す岩井さんの言葉が印象的でした。今回は二つ折りにした着物が入る二尺六寸を買い付け。帯用や小物用などサイズ違いで揃えたら、インテリアとしても楽しめそうです。

つづら 作/岩井つづら店

下/「つづら・小」。二尺半蓋。60×37×21cm、ふた65×42×8cm、溜、57,000円。上/「掛子付き小物入れ」朱、10,450円。紋や名入れも可能。●いわいつづらてん/東京都中央区日本橋人形町2-10-1 TEL 03 3668 6058。9時30分~18時。日曜・祝日休。

かしゆか

音楽ユニットPerfumeのメンバー。6月15日より宮崎で『Perfume COSTUME MUSEUM』。6月22日『EIGHT-JAM FES』に出演。最近は良い悉皆屋さんを探し中。@kashiyuka.prfm_p000003

Viewing all articles
Browse latest Browse all 2781

Trending Articles