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星野道夫の名言「私はアラスカが好きだが、…」【本と名言365】

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April 9, 2024 | Culture, Travel | casabrutus.com

これまでになかった手法で新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。極北の地、アラスカの自然をこよなく愛し、生涯を捧げた写真家、星野道夫。写真とともに残された多くの言葉から、星野にとっての「生きること」を探る。   

星野道夫/写真家、探検家、詩人

私はアラスカが好きだが、ニューヨークも好きだ。

地平線の彼方から現れるカリブーの群れ、大きく宙を舞うザトウクジラ……。雄大な自然が息づくアラスカに身を置き、写真を撮り続けた星野道夫。極北の生命の営みをまざまざと捉えた星野の写真は、43歳の若さでこの世を去った以後も多くの人を惹きつけてやまない。写真家として活動しながら、最果ての地での日々を綴り、多くの著書を残した星野。そのひとつ『長い旅の途上』では、アラスカからニューヨークに訪れた時のことが記されている。

「原野にポツンと浮かぶ家の灯にも、大都会を埋め尽くす夜景にも、私は同じような愛おしさを感じていた」

星野にとって、アラスカの原野とニューヨークのコンクリートジャングルは似たもの同士だった。広大な世界にとって、ひとつの命の存在は儚い。しかし、過酷な世界を生きるアラスカの動物たちであれ、混沌とした都会に暮らす人々であれ、日々を懸命に過ごしていることには変わりない。星野が愛したのは、たくましく生き続ける生命そのものだった。「私たちが生きていくということは、だれを犠牲にして自分が生き延びるか、という日々の選択である」。極北での厳しい営みをこう語った星野。たくましく、そして時に愛らしく写る動物たちには、力強く生きることの尊さが込められている。

星野道夫の遺稿76篇を収録したエッセイ集。アラスカの四季折々の情景や狩猟民族との交流が星野の軽やかな文体で綴られる。『長い旅の途上』文:星野道夫、文春文庫 820円/2002年。

ほしの・みちお

1952年、千葉県生まれ。写真家、探検家、詩人。慶應義塾大学在籍中にアラスカの写真集に出会い、写真家を志す。同校卒業後、写真家の助手を経て、アラスカへ渡る。写真家として精力的に活動を行い、1989年には『Alaska 極北・生命の地図』で第15回木村伊兵衛写真賞を受賞。1996年、カムチャツカ半島に滞在中にヒグマの事故により43歳で逝去。

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