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〈エスパス ルイ・ヴィトン東京〉で開催。アナログからデジタルへの移行を物語るマーク・レッキーのイメージ。

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April 3, 2024 | Art, Fashion

英国「ターナー賞」の受賞作家であるマーク・レッキー。彼の名をアート界に知らしめた初期の代表作を含む2つの作品にフォーカスした個展が〈エスパス ルイ・ヴィトン東京〉で開催されている。

〈エスパス ルイ・ヴィトン東京〉の個展会場にて。今回が日本での初めての個展であり、日本を訪れたのも初めてというレッキー。

英国で最も権威のある現代美術賞「ターナー賞」の受賞作家であるマーク・レッキー。〈エスパス ルイ・ヴィトン東京〉で展示中の映像作品《Fiorucci Made Me Hardcore》は、彼の評価を確立した初期の代表作だ。レイヴやダンスなど1970年代から90年代の若者が熱狂したサブカルチャーを回顧させるこの作品は、実は彼が撮影したものではなく、他人が持っていたビデオテープをつなぎ合わせたもの。

「制作を始めたのは1997年。インターネットが普及する前だったので、レアなビデオを持っている人がいると手紙を書いてテープを送ってもらいながら制作しました。ちょうどアナログからデジタルへの移行期に作られたものであることもこの作品の大事な要素かもしれません」

《Fiorucci Made Me Hardcore》のシーン。労働者階級の熱狂的なフットボールファンたちのファッション「カジュアルズ」やクラブシーンなど70年代から90年代の英国のローカルなカルチャーを記録した映像をカットアップした作品で、労働者階級出身でありその文化の中で育ったレッキー自身のビデオエッセイでもあるという。

今回、本作を彼の音響作品《SoundSystem》と組み合わせて展示。レイヴさながらの大音響で没入するように映像に浸れるのは本展ならではだ。また天井と壁の隙間に押し込まれたフィリックス・ザ・キャットの立体作品にも注目したい。猫は高くて狭い場所が好きだからこんな場所に? そう聞くと。

「そう解釈してもらってもいいですが、個人的には思いもよらない場所にこの作品を置くのが好きなんです。幻覚を見ているかのように。私が彼に惹かれたのは、世界初のテレビの放送実験の際に使われたキャラクターでもあったから。私にとってイメージとは見えないものを想像する力であり、一方で中毒性があるもの。フィリックスはそうしたイメージの化身のような存在なのです」

Fiorucci Made Me Hardcore with SoundSystem(1999年-2003年-2010年) 本展ではレッキーの代表的な映像作品《Fiorucci Made Me Hardcore》を、スピーカーを積み上げたオブジェ作品《SoundSystem》と組み合わせて展示。サウンドシステムは、野外にスピーカーを持ち出してレイヴを開いたジャマイカの労働者階級たちの音楽的シンボルであり、同じく労働者階級出身であるレッキーの個人史とも深く結びついた存在だ。

〈エスパス ルイ・ヴィトン東京〉

フォンダシオン ルイ・ヴィトンが所蔵するレッキー作品を紹介。東京都渋谷区神宮前5-7-5 ルイ・ヴィトン 表参道ビル7F TEL 0120 00 1854。2024年8月18日まで。12時〜20時。休館日はルイ・ヴィトン 表参道店に準ずる。入場無料。

マーク・レッキー

1964年、英国・バーケンヘッド生まれ。大衆文化やテクノロジー、現代社会への関心を映像や彫刻、パフォーマンス作品など多彩な方法で表現。2008年、英国で最も権威のある現代美術賞「ターナー賞」を受賞。日本でも2008年『横浜トリエンナーレ』に作品を出展している。

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