Quantcast
Channel: カーサ ブルータス Casa BRUTUS |
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2761

画家と写真家による二人展。それぞれの視線で写しとったものとは?

$
0
0

March 29, 2024 | Art | casabrutus.com

小誌でも活躍する写真家・小川真輝と画家の石田淳一による2人展が、東京・日本橋の〈一番星画廊〉で開催中だ。小川は今回が初の作品発表の場となった。

2人とも、普段見慣れたものをモチーフにする。左上《筍》、左下《2023年4月12日》、中《2023年4月19日》すべて石田淳一。右《視点14》小川真輝。

日々、風景やものをまなざし、写し取る。写真家はカメラ、画家は絵筆、と使う道具は違うし、きっと描写のプロセスも異なる。しかし、2人の表現はぶつかり合うのではなく、緩やかに交錯していた。

小川真輝は小誌Casa BRUTUSや他の媒体でも大活躍している写真家だ。光の使い方に長けており、様々なアイデアで被写体を輝かせ、現場では絶大な信頼を得ている写真家の一人だ。石田淳一は、主に静物を写実技法で描き続けている画家だ。使用する画材は油絵の具、ペン、鉛筆等作品によって様々だが、「眼の前にモチーフを置いて描く」そのシンプルな行為にこだわり制作を続けている。

2人が出会ったのは、2020年。石田の個展『ある日-trace of life-』が同ギャラリーで開催された時のこと。展示撮影をした小川が石田の作品を見て、対話が始まった。構図や光、表現すること。絵画と写真について、と2人の話は尽きることなく深まっていった。その様子を見て、この展示の企画が立ち上がったとギャラリーオーナーはいう。

油絵、写真、ペン画と多様な肌理が目を喜ばせる。左上《2023年2月20日》、右上《小川真輝へのオマージュ》すべて石田淳一、左下《視点01》小川真輝。

作品制作をする過程では、数ヶ月おきに制作中の作品を見せ合い、互いに課題を出した。石田の静物「物が置いてある風景」に登場する布は小川から石田へ、「視点07」に登場する骸骨は石田からのリクエストである。小川の作品の中には、石田が用いるモチーフや構図を想起させるものがときおり登場するように思えた。石田はどうだったのだろうかと尋ねてみたら、以下のコメントが返ってきた。

「小川さんからの刺激を受けた事は勿論です。小川さんの写真はモノを使いながらモノから切り離した(正確にはモノから地続きで発生した)見え方があります。自分もモノや絵の具、写実性を使いながら眼目(がんもく)には映らない性質を表現する事を目論んでいます。その重なるポイントが写真からのアプローチをされている小川さんの写真を拝見していて再認識と発見があります」(石田淳一)

眼の前にあるモチーフを写実的に切り取る写真家と画家の2人。一点一点、表現された作品の美しさも見ものだが、それぞれの視線が見えたり、時に交錯したりする。その瞬間が面白い。ぜひ会場に足を運びたい。4月13日まで。

大胆に切り取られた多様なテクスチュアの静物。左《視点06》、中央《視点02》、右《視点03》すべて小川真輝。

在るということ、それぞれの視線

〈一番星画廊〉東京都中央区日本橋3-6-9箔屋町ビル1F。12時〜17時。〜2024年4月13日まで。日月休。入場無料。TEL03 3272 2525。

石田淳一

いしだ じゅんいち 1981年埼玉県生まれ。2004年、日本大学芸術学部美術学科卒業。2023年、第11回前田寛治大賞 大賞受賞。近年の主な個展に「ある日 - trace of life -」(2020年、一番星画廊)、「石田淳一展-日々の貌- (2021年、永善堂画廊)、「石田淳一展 -見詰めるということ-」(2020年、日本橋高島屋)などがある。 https://junpainting.crayonsite.net/

小川真輝

おがわ まさき 1984年京都府生まれ。2009年、京都精華大学大学院芸術研究科博士前期課程修了。2014年、カメラマンアシスタントを経て独立。現在は、雑誌や広告等で独自の世界観を表現し活躍している。 https://ogawamasaki.com/

Viewing all articles
Browse latest Browse all 2761

Trending Articles