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【本と名言365】ヴァルター・グロピウス|「美をつくりだすことと美を愛することは、…」

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February 23, 2024 | Culture, Architecture, Design | casabrutus.com

これまでになかった手法で新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。バウハウスの創立者で、近代建築の四大巨匠の一人とされるヴァルター・グロピウス。その晩年の言葉は「美」の根源的な力を教えてくれる。

ヴァルター・グロピウス/建築家

美をつくりだすことと美を愛することは、大きな幸福をもたらして人間を豊かにするばかりでなく、道徳的な力をももたらしてくれる

1919年にバウハウスを開校し、初代校長となったヴァルター・グロピウス。28年に退いたのち、32年にはイギリスへ亡命。37年にはハーバード大学に招かれ、以後は主にアメリカで暮らした。さらに54年、71歳になる年には日本を含む世界各地の建築を見て回った。文字通り国際的な建築家だ。本書『建築はどうあるべきか』は主に、その世界旅行以後の講演での発言や原稿がまとめられている。

サブタイトルにもなっている「デモクラシーのアポロン」と題された講演では建築はもとよりより広く「美」について語っている。

「美をつくりだすことと美を愛することは、大きな幸福をもたらして人間を豊かにするばかりでなく、道徳的な力をももたらしてくれる」

科学の進歩、そして行き過ぎた専門化などにより人類共通の文化的価値基準がなくなりつつあるが、それを救うのは「美」である。この概念は哲学・技術と切っても切り離せない、つまり専門化しえないものであるから、失われた全体性をもたらしてくれるのだと話す。そして話はグロピウスの「夢」だという全体建築、すなわち日用品から都市まで、すべての視覚的環境を包含する建築へドライブしていく。この名言は彼が長年にわたり培ってきたテーマのスタート地点でもあるのだ。

こういった発言の数々もさることながら、本書は近代建築の交友録としても貴重。グロピウスが四大巨匠について生き生きと語ってもいるのだ。若くして知り合ったミース・ファン・デル・ローエを褒め称え、ル・コルビュジエを愛称「コルブ」と呼ぶ。一方、フランク・ロイド・ライトは自己中心的過ぎると批判も。モダニズム建築の世界がより身近な存在に感じられるはずだ。

世界一周のフィールドワークをもとにした講演と原稿がまとまった晩年の著作。「日本の建築」と題した小論では著者が撮影した建築写真も多数収録。解説は深澤直人。『建築はどうあるべきか』ヴァルター・グロピウス著、桐敷真次郎訳 ちくま学芸文庫 絶版/2013年。

ヴァルター・グロピウス

1883年ドイツ生まれ。ミュンヘン、ベルリンで建築を学んだのち、建築家ペーター・ベーレンスの事務所に入り、ドイツ工作連盟に参加。のちにバウハウスを開校。ハーバードのデザイン大学院建築科長を務め、バウハウス思想を伝える。手掛けた主な建築にファグス靴工場(1911年)、現メットライフビル(58年)など。69年没。

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