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【本と名言365】ジョナサン・アイブ|「違うものを作るのは簡単だが、…」

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February 22, 2024 | Culture, Design | casabrutus.com

これまでになかった手法で新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。iPhone、iMac、iPad……今では知らない人のいないデバイスの数々で、常に新しい時代を切り開いてきたアップル。世界中の人々に愛用される大きな理由のひとつは、間違いなく研ぎ澄まされたデザインにある。その立役者となったのが、デザイナーのジョナサン・アイブ。創業者、スティーブ・ジョブズの右腕として多くの名作を生んだアイブのデザインへの向き合い方をひもとく。

ジョナサン・アイブ/プロダクトデザイナー

違うものを作るのは簡単だが、いいものを作るのは難しい。

シンプルで直感的。アップルがこれまで世に送り出した製品には、確固たるデザインの哲学が存在する。これまでにない革新的な機能を持ちながら、細部まで徹底したデザインは、ジョナサン・アイブがいなければ生まれようのなかったものだ。

1992年、アイブが加わった当時のアップルは、不遇の時代を迎える直前だった。「アップルは全くイノベーションの起きない会社になっていた」とアイブが当時を振り返るように、手当たり次第に商品を発表し、デザイナーの仕事といえば、完成間近のプロトタイプに手を加えることくらい。業績も低迷し、混沌を極めたアップルの最大の転機となったのは、1997年7月9日。創業者スティーブ・ジョブズの復帰が全てを一変させた。

「デザインを外見と捉えるのは間違いだ。デザインとはものの働きなんだよ」。ジョブズの言葉に呼応するように、アイブのデザインは大きく開花した。こうして1998年に発売した初代iMacは、色鮮やかな半透明プラスチックの斬新さ、丸みを帯びた親しみやすさで爆発的なヒットを記録。瞬く間にアップル復活の立役者となった。それを皮切りに、iPodやiPhoneなど主力製品のデザインを手がけたアイブ。

「僕の目標は、シンプルなもの、持ち主が思い通りにできるものだ」

これまでにない全く新しい製品でありながら、説明がなくとも手にすっと馴染む。外見の美しさだけではなく、ユーザーにとって本当に使いやすいプロダクトをつくることこそ、アイブにとってのデザインだった。

2011年、ジョブズがこの世を去ってからも精力的にアップル製品を手がけたアイブ。2017年に最高デザイン責任者に就任した後、2019年に27年間勤めたアップルを退社。親友、マーク・ニューソンとともに自らのデザイン会社「LoveFrom」を立ち上げた。偉大な製品の生みの親となった稀代のデザイナーは、これからどのような製品を生み出すのだろうか。

長年アップルを取材し続けるジャーナリスト、リーアンダー・ケイニーがジョナサン・アイブの半生を追った伝記。アイブと関わりのある人物の言葉とともに、アイブのデザイン哲学を追求する。『ジョナサン・アイブ』リーアンダー・ケイニー著、関美和訳、日経BP社1,980円/2015年。

ジョナサン・アイブ

1967年、イギリス生まれ。ニューカッスル・ポリテクニック大学(現ノーザンブリア大学)で工業デザインを学ぶ。ロンドンのデザイン会社、タンジェリンに勤めた後、1992年からアップルでキャリアを積み、1996年に正式にアップルへ入社。29歳にして、デザインチームを率いる存在となる。2019年に同社を去り、自身のデザイン事務所「Lovefrom」を設立。2023年にオーディオ・ブランド「LINN」のターンテーブルのデザインを手がけたことで話題を呼んだ。

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