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キッチンガーデンのある豊かな暮らし。建築家・津端修一夫妻のドキュメンタリー。

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January 7, 2017 | Culture, Architecture | casabrutus.com | text__Yuka Uchida

アントニン・レーモンドや坂倉準三の元で建築を学び、〈阿佐ヶ谷住宅〉や〈多摩平団地〉をはじめ、数々の名作団地を設計した建築家の津端修一。その集大成ともいえるのが、妻の英子さんと育んだキッチンガーデンに囲まれた自邸です。二人の暮らしを追ったドキュメンタリーは、人生の豊かさとは何かを伝えてくれます。

建築家の津端修一さんとその妻、英子さん。ポレポレ東中野で上映中のドキュメンタリー『人生フルーツ』より。
本誌でも度々、紹介してきた建築家・津端修一さんとその妻、英子さんのライフスタイル。二人の住まいがあるのは、津端さんが設計した愛知県春日井市の〈高蔵寺ニュータウン〉の一角。そこに300坪の土地を購入し、30畳ワンルームの平屋を建てて暮らしてきた。平屋を取り囲むのは120種もの野菜や果物が実るキッチンガーデン。平らに均された敷地にわずかでも里山や雑木林を取り戻したいという思いで、敷地の2/3を庭とし、ほぼ自給自足の暮らしを営んできた。
津端さん夫妻の自邸。師であるアントニン・レーモンドの自邸に倣ったという。
現在、劇場公開されているドキュメンタリー『人生フルーツ』が追いかけるのは、90歳の修一さんと87歳の英子さんの日常だ。収穫した野菜で人々をもてなし、まめに手紙を書き、お互いを尊重ながらのんびりと一日を過ごす二人。「小さく、こつこつ、ときをためて、ゆっくり」と生きる津端夫妻の姿に、「老後」という言葉は似合わない。そこには、歳を重ねたからこそ見いだせる人生の楽しさや豊かさが詰まっている。
四季折々のキッチンガーデンや、小さな工夫が散りばめられた庭づくりも今作のみどころ。
ナレーションを務めるのは女優の樹木希林。作中では、2015年に他界した修一さんが90歳にして新たな仕事に向き合う姿や、修一さん亡き後の英子さんがひとり暮らしを淡々と紡いでいく様子も映し出される。

生活の幹となる「住宅」のあり様を考えぬいた建築家が、自邸を舞台に、人生の豊かさをどう考え、実践したのか。暮らしの足元を見つめなおすことのできるドキュメンタリーだ。
右が津端修一さん、左が英子さん。共に暮らして65年。お互いを「修たん」「ヒデコさん」と呼び合う。

津端修一

1925年愛知県生まれ。東京大学第一工学部建築学科を卒業後、アントニン・レーモンド、坂倉準三の事務所を経て、55年に日本住宅公団入社。〈阿佐ヶ谷住宅〉〈多摩平団地〉など、団地黎明期に数々の計画を手がける。〈高蔵寺ニュータウン計画〉で日本都市計画学会石川賞受賞。広島大学教授などを歴任し、自給自足の暮らしの傍ら「自由時間評論家」と名乗って活動した。2015年没。

津端英子

1928年愛知県生まれ。愛知県半田市の老舗の造り酒屋で育つ。27歳で修一と結婚、2人の娘を育てる。畑仕事や料理、編み物など、手仕事を大切にしながら、今も〈高蔵寺ニュータウン〉の平屋に暮らす。

『人生フルーツ』

ナレーション:樹木希林、監督:伏原健之。91分。ポレポレ東中野で上映中。1月9日より名古屋シネマテーク、1月14日より大阪・第七藝術劇場、ほか全国順次公開。公式サイト
(C)東海テレビ放送

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