November 24, 2023 | Design, Food, Travel | casabrutus.com
2023年11月24日、〈麻布台ヒルズ〉の開業と共に、同施設のタワープラザ3階〈ザ・コンランショップ 東京店〉がオープンした。併設のレストランを含めると1,300㎡にもなる店内を、代表の中原慎一郎さんにいち早く案内してもらった。
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〈ザ・コンランショップ〉は、イギリス・ロンドンに本社を置くホームファニシングショップだ。創始者のテレンス・コンランのセレクトが世界中で一大ブームを巻き起こし、1994年、ついに日本上陸。新宿のショップに目利きたちが押し寄せた。2020年、惜しまれつつもテレンスが亡くなった後、2022年4月、ジャパンの代表に〈ランドスケーププロダクツ〉の中原慎一郎がなるというビッグニュースに日本のデザイン界隈が湧いた。
それからちょうど1年後の2023年4月、〈ザ・コンランショップ 代官山店〉がオープン。〈ザ・コンランショップ〉はこれまで全世界にあるショップのすべてをイギリス主導で展開してきたが、この店は初めて国外から発信する「自主編集型ショップ」。アジアをキーワードにセレクトし、設計も芦沢啓治が担当した。
その興奮も冷めやらぬ2023年11月、最注目のスポット〈麻布台ヒルズ〉内に、最大級の〈ザ・コンランショップ 東京店〉が誕生した。早速取材に伺うと、中原慎一郎さんは「テーマは、“極上の日常”。定番でも上質、日常だけど特別という理念で吟味した家具や小物を集めました。普段の生活よりもちょっと上質でリラックスした空間を提案したいと考えています」と言う。
中原さん、そんなショップの見どころ、教えてください!
1) シンプル、モダンな内装
「基本的に設計はイギリス本国が担当しましたが、今の気分に合う上質なシンプルさを表現したいとお願いし、一緒に調整していきました。空間にも手触りが欲しいと、土っぽさを加えてもらいたいというのも僕たちからのリクエストです」(中原さん)。木やタイル、左官など、上質なテクスチャーが現代のラグジュアリーを感じさせる約1,300㎡の広大な空間に圧倒される。
店内には“極上の日常”という理念のもとセレクトした、世界各国のものづくりを感じさせるプロダクトが並ぶ。
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2) モノはインテリアの一部
「昔の〈ザ・コンランショップ〉はヨーロッパとかアジアとか、テイスト別にコーナーが仕切られていた。それが新しかったんですね。でも今僕らの生活を見てみると、イギリスのアンティークの上に東南アジアの雑貨を置き日本茶を飲む、なんてことが当たり前になっている。だから、いろんなものを一緒に並べて、居住空間を想像できるようにしました。エントランスの『スイングエリア』をはじめ、スタイリングで見せるようにしています」(中原さん)
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3) グリーンの棚と赤いタイル
シックにまとめられた店内だが、緑や赤、そして、レストラン奥の深い紺色がアクセントとなっている。
「これまで〈ザ・コンランショップ〉では、鮮やかなブルーを用いることが多かったのですが、店のコンセプトに合わせて、上質な色合いでまとめています」(中原さん)。
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4) 新しい作家の発掘
作家の発掘は中原さんの得意とするところ。初めて取り扱う作家の作品や産声を挙げたばかりのプロダクトにも躊躇がない。
たとえばこの店のイチオシは大阪・箕面市でオーダーメイドの家具製作を行う〈大川家具製作所〉による無垢のクローゼット。「日本の収納家具を上手に作るところをリサーチするなかで出会った大川修平くんと一緒に、アーリーアメリカンを彷彿とさせるような収納家具を作りました。いいものができました。決してお安くはありませんが、こういうものが売れるといいなあと思っています(笑)」。
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5) 社員みんなでセレクトする
「1994年からこれまでずっと、商品セレクトもすべて本国主導だったんです。でもこれからは少しずつ、自分たちからも発信できるようになれたら」と中原さん。代官山店ではすべてを日本からセレクトした。
「代官山店での経験をきっかけに、ジャパンのバイヤーたちも自分たちでバイイングに行くことの面白さに気づき始めています」(中原さん)。麻布台でも、陶磁器や家具、服など、いくつかは日本でセレクトした。自分たちの足で見つけてきた商品だから、ひとつひとつ、ストーリーを語ることができる。
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6) 専門店のラインアップが充実
ファッションブランド〈ATON(エイトン)〉を手掛ける久﨑康晴の新たなライフスタイルブランド〈Échapper(エシャぺ)〉は、ショップのコンセプトである「極上な日常」にぴたりとハマる。「ブランケットまでのラインアップを常設で取り揃えるのは日本で初めてです」(中原さん)。
東京・合羽橋の老舗料理道具屋〈釜浅商店〉のコーナーも充実している。週末は〈釜浅商店〉のスタッフが立つこともあり、専門的な質問に答えてくれる。
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7) 植物のある暮らしの提案
観葉植物やガーデングッズ、ツールなど、植物のあるライフスタイルを提案する。
「以前から造園道具の提案をしたいという思いがありましたが、ロンドンのショップを訪れて以来気になっていたイギリスのブランド〈Niwaki〉のアイテムを入れました。日本で剪定技術を学んだ方のブランドなんですよ。すごくセンスがいい。麻布台周辺は外国人の方も多いので、外国人の方にも響く品揃えを意識しています」(中原さん)
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8) ポップアップとヴィンテージ
ショップの奥には、ガラスに囲まれた、ポップアップ的な役割を果たすスペースを設けた。「その時々の気分によって展示を変えていきます。自分がよく知っているギャラリーで、簡単なエキシビションをやらせてもらっている、そんなイメージです」(中原さん)。
オープン時は、鎌倉の〈Galerie One〉によるフランスヴィンテージ。
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9) 念願のレストラン
日本の〈ザ・コンランショップ〉としては初のレストランを併設。店名は、創業者テンレス・コンランのミドルネームから〈Orby〉と名付けた。
「テンレス・コンランはもともとレストラン事業にルーツがある人。彼のプレゼンテーションをするにあたりレストランの存在は不可欠だという思いは常々ありました。実現できてうれしく思います」(中原さん)
そもそも中原さんの実家は鹿児島の仕出し屋。飲食への造詣も思いも深い。「生まれて初めて行った海外旅行で、ロンドンのミシュランビル(当時)の〈ザ・コンランショップ〉に行きました。家具屋だと思っていったら、オイスターバーがあったり、花屋があったりと衝撃を受けました。僕の持っていた固定概念が覆された」。
レストランをオープンするにあたり、中原さんが真っ先に声をかけたのが、三軒茶屋の〈uguisu(ウグイス)〉や西荻窪の〈organ(オルガン)〉で店主を務める紺野真さん。紺野さんも「これまでにできなかった経験ができる」とオファーを快諾。彼をヘッドシェフに迎え、モダンフレンチにブリティッシュの要素を加えたメニューを提供する。
「コンランはイギリスのショップだから、イギリス料理をやりたかった。だから紺野さんにも古くて新しい〈St.John〉とか〈Rochelle Canteen〉を体験しに行ってもらいました」。そこから生まれた料理が待ち遠しい。
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10) レストランのアイテムもショップで購入可能
「テレンスは、“普通”の良さを知っている人だったと思うんです」と中原さん。テレンス・コンランが唱えたスタイル「Plain, Simple, Useful」の理念をベースに、「時代に即した、ストーリーのあるものを置きたい」という思いからキュレーションしたアイテムはもちろん、数多くのオリジナルのアイテムを通し、“極上の日常”を過ごせる衣食住を提案する。
「レストランで使うものはすべてショップで買えるようにしたい」とのこと。
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「テレンス・コンランの哲学を念頭に置きながら、今後、自分たちの“選び方”を変えていく必要がある。今はその過渡期かなと思っています。もしかしたら、これまでの〈ザ・コンランショップ〉を念頭に足を運んでくださったお客さまの気持ちを裏切ることもあるかもしれません。ならばいい意味で裏切りたい」と、中原さんはどこか楽しそうに語る。その言葉に、ますますこれからが楽しみになってくる。
“今”を詰め込んだ「極上の日常」を探しに、〈ザ・コンランショップ東京〉へぜひ!
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