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【本と名言365】長沢節|「人の持ってる才能なんて、…」

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November 24, 2023 | Culture | casabrutus.com

これまでになかった手法で新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。日本におけるファッション・イラストレーターの先駆けとして知られる長沢節。川久保玲や山本耀司ら多くの優れた人材を輩出した「セツ学校(セツ・モードセミナー)」の創設者でもある彼の才能の伸ばし方とは。

長沢節/イラストレーター

人の持ってる才能なんて、試験ではかれるものではないじゃない

戦後間もない日本で、ファッション・イラストの礎を築いた長沢節。弟子入りを志願する多くの若者に応える形で1954年に開いたのが「長沢節スタイル画教室(のちのセツ・モードセミナー)」だ。2017年に閉校するまで、川久保玲や山本耀司、花井幸子、金子功、吉田ヒロミなど日本を代表するクリエイターを数多く育てた。

これだけの才能溢れる若者が集う学校ならば、さぞかし入学の条件が厳しいのだろうと想像するが、入学試験はなく、先着順(のちに抽選形式に)。長沢節は偏差値も絵のレベルも問わなった。なぜなら、「人の持ってる才能なんて、試験ではかれるものではない」からだ。「教室(セミナー)」と名乗ってはいるが私塾であり、美大や専門学校とは違って、理論を教えるようなカリキュラムはなく、ただひたすらモデルを囲んで絵を描くのみ。それが何よりの教育だと節は考えていた。ファッション・イラストにはリアルな描写ではなく、その人の個性やセンスを求められる。才能を伸ばすも伸ばさないも本人次第であり、才能が開花するかは長沢節本人もわからない。だから、試験で人を落とすということはしないのだ。セツ・モードセミナーは“何も教えない学校”で有名だったが、固定概念に捉われず、自由を愛した節の精神は今も多くの卒業生の中に息づき、クリエイティビティに発揮されている。

戦後ファッション・イラスト界を牽引した長沢節の人生を辿り、「セツ美学」の秘密をたどる。『長沢節物語―セツ学校(セツ・モードセミナー)と仲間たち』西村勝著、マガジンハウス1996年初刊発行/1700円

ながさわ・せつ 

1917年福島県生まれ。イラストレーター。文化学院へ入学後、水彩画家へ。挿絵画家として活躍した後、独自のスタイル画を確立し、戦後日本のファッション界に一世を風靡。多くの優れた人材を輩出する「セツ学校」を開校。1999年没。

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