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【本と名言365】フィンセント・ファン・ゴッホ|「畑を耕すようにカンヴァスを耕していく」

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October 31, 2023 | Culture | casabrutus.com

これまでになかった手法で、新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。わずか10年という短い画家生活の中で、のちの美術運動に多大な影響を与えたゴッホ。精神的な病に苦しみながらもキャンバスに向かい続けたゴッホが残した言葉には、自身の芸術観が込められていました。

フィンセント・ファン・ゴッホ/画家

畑を耕すようにカンヴァスを耕していく

孤独や苦悩、情熱などの感情を独自の色彩理論と荒々しい筆致で表現し、観る人に感情的な共感を訴求したゴッホ。その実験的な姿勢は、抽象表現主義やフォーマリズムなど芸術の進化に大きな影響を与えたが、生前はあまり評価されず、商業的な成功を収めることができなかった。37歳で自らの命を落とすまで、ゴッホは貧困と精神的な問題に苦しんだ。そんなゴッホを経済的に支援し、精神的な支柱を果たしたのが弟のテオだ。27歳で画家になることを決意し、独学で美術を学んだ兄を画商の弟は励まし、彼の制作費用を負担するようになる。ゴッホは信頼するテオや母親など家族に数多くの手紙を残しており、それらを収録した書籍『ゴッホの言葉』には、自身の芸術観や生活に関する深い洞察が含まれている。

精神を病み、療養院に入った1889年。先人たちの版画作品の模写に励んだゴッホが母親に宛てた手紙には「彼らが畑を耕すようにカンヴァスを耕していくのです」と記されている。彼らとは、ゴッホが生涯にわたって描き続けた農民だ。工業化によって牧歌的な風景が失われつつある中、自然と寄り添いながら、質素な暮らしを営む農民はゴッホにとって高貴な存在であった。自然のサイクルに呼応した人間の努力を見つめ続ける中で、人間の本質や自然の真実を具体化し、献身的に絵に取り組もうと試みたのだ。母親に宛てた言葉には病に苦しみながらも、芸術家としての情熱を燃やし続け、自己表現を諦めない態度が示されている。

ゴッホの弟であるテオやそのほかの家族や友人らへ送った手紙を収録。ゴッホの芸術や生活についての洞察的な言葉が含まれている。『ゴッホの手紙―絵と魂の日記』H.アンナ スー 西村書店 4180円

フィンセント・ファン・ゴッホ

1853年オランダ生まれ。27歳で絵画に興味を持ち、独学で画家としての道を歩み始める。生涯にわたり精神的な問題に悩まされ、37歳で命を絶つ。1890年没。

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