October 30, 2023 | Architecture, Art, Design | casabrutus.com
大阪駅の目の前、再開発が進む「うめきた2期エリア」に建設中の新しい文化施設の名称が〈VS.(ヴイエス)〉に決定し記者会見が開かれた。その外観はグリーンに覆われ、半分地下に埋まったキューブ型?!
JR大阪駅の北側に位置する梅田貨物駅跡地(うめきた)の再開発事業は約20年前からスタート。その1期区域には2013年オープンの〈グランフロント大阪〉などがある。その西隣に位置するうめきた2期区域の再開発事業〈グラングリーン大阪〉が現在進められており、広大な〈うめきた公園〉が含まれるのが特徴だ。24年9月に開業予定の〈グラングリーン大阪〉の中核機能施設となる〈JAM BASE〉(コワークスペースや交流スペースを擁するイノベーション創出支援施設)の一部として公園内に誕生するのが展示施設〈VS.(ヴイエス)〉だ。
トータルメディア開発研究所と野村卓也事務所が共同で運営していくこの施設は特定のテーマやコレクションを持たず、さまざまな文化と新しい発想を大阪の地から世界に向けて発信していく「装置」のようなものだと、野村卓也事務所代表・野村卓也は語る。扱う分野は伝統文化のみならず、最先端テクノロジーやリベラルアーツなども含まれ、アーティスト、企業、研究者などさまざまな人が出会い、イノベーションを起こす場になるという。
名称の〈VS.〉とは「Visionary」の「V」に「Station/Stage/Studio/Society」などの「S」を掛け合わせたもの。また対比や対立を表すヴァーサスの意味も含まれ、そこには伝統工芸と最新テクノロジー、AIと人間、若者と高齢者など相対するものがそれぞれの立ち位置を表明しつつ互いに協力していく未来を表しているという。施設の事業内容に共鳴し活動していくプレイヤーが既に50名以上集まり、「VS.リーグ」を組成している。
施設の設計監修を安藤忠雄建築研究所が、設計・監理を日建設計が手がけている。合計1,400㎡の展示空間の大部分が地下に配置されており、最大面積のスタジオAを擁するキューブ状の建物の上半分が地上に現れ、カフェの建物と隣接する。スタジオAは15mもの天井高を誇り、没入型の映像作品やパフォーマンス、大型作品の展示などにも活用できる。
「グラングリーン大阪プロジェクトの中核には“大阪に命の公園を作る”という思いで整備が進められている〈うめきた公園〉がある。そこには小さな滝のある池があり、橋がかけられ、桜の木が植えられ、全体が森のようになるだろう。これほどの大きな公園が大都市の大型駅に直結する形で整備されることは国際的に見てもかなりインパクトがある。その公園の中に建てられる〈VS.〉は周辺環境に影響を及ぼさないよう、建物があまり目立たないほうがいい。公園と調和するよう半分は地下に埋め、表面を植栽で覆うようにした」と安藤は語る。
2024年9月開業時のオープニングには真鍋大度のソロ・エキシビジョンが予定されており、そのプレイベントとして2023年11月1日〜3日に〈グランフロント大阪〉北館4階ナレッジシアターにて真鍋のオーディオビジュアル・パフォーマンスが開催される。
また大阪・関西万博開催に合わせ、2025年4月には安藤忠雄建築展も予定されている。大阪で生まれ育った安藤の〈VS.〉に寄せる期待は大きい。
「大阪には文化がない、緑がないと言われるが、ここから何か面白いものが生まれるんじゃないか? 100歳まで生きる時代には、知的体力をもっと上げていかなければならない。この〈VS.〉がそのための拠点になればいいと思います」(安藤忠雄)