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【本と名言365】丹下健三|「この人の心を動かす何か、それを…」

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September 25, 2023 | Culture | casabrutus.com

これまでになかった手法で、新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。戦後日本の建築をリードし、いまなお色あせることないマスターピースの数々を手がけた丹下健三。ル・コルビュジエを敬愛したことでも知られる丹下は、はたしてどのようなところに影響を受けたのでしょうか。

丹下健三/建築家

この人の心を動かす何か、それを忘れてしまったら、建築など、一体何であろうか。

第二次世界大戦後の復興期から、高度経済成長、東京オリンピック、大阪万博など、戦後日本を形作ってきた数々のモニュメンタルな建築で世界的に評価された建築家が丹下健三だ。多くの国家的プロジェクトを手がけるとともに、浅田孝、大谷幸夫、磯崎新、槇文彦、黒川紀章、谷口吉生などのそうそうたる建築家を輩出したことでも知られる。

東京帝国大学卒業後、前川國男のもとで働いた丹下が書いた「ミケランジェロ頌-ル・コルビュジエ論への序説として-」は丹下研究における重要な論文として知られる。タイトルにあるとおり、丹下はミケランジェロとル・コルビュジエの二人を「最高の使命」を担った建築家であるとして両者を論じる。二人への尊敬は生涯変わらず、丹下は自らの回顧録『一本の鉛筆から(人間の記録)』でも論文を書いた経緯を振り返りながら、ル・コルビュジエの仕事における「この人の心を動かす何か、それを忘れてしまったら、建築など、一体何であろうか」と書く。

一方でおそらくバウハウスのデザインを「だがそれは、衛生陶器のようで清潔だが感動を呼ぶものではない」とバッサリ切り捨てる。同じように装飾を抑えながら、なぜミケランジェロやル・コルビュジエの作品は人の心を動かすのか。丹下は幾何学による氷の殿堂を溶かすほどの造形力がそれを担うのだとみる。そしてそうした造形力の探求が丹下の代表作を形作っていった。国立代々木競技場、東京カテドラル、香川県庁舎、そして広島平和記念資料館など、丹下の名作もまた幾何学という氷を溶かすほどの情熱的な造形力によって形作られている。

1983年に日本経済新聞の連載「私の履歴書」で掲載された内容をまとめた書籍『一本の鉛筆から』の再刊行本。丹下の誕生から数々の名建築、海外での都市計画などにまつわるエピソードを収録。『一本の鉛筆から(人間の記録)』日本図書センター 1997年初版発行

たんげ・けんぞう

1913年大阪府生まれ。1935年東京帝国大学(現・東京大学)工学部建築科卒業後、尊敬するル・コルビュジェの教え子であった前川國男建築事務所に入所する。1949年東京大学大学院を修了後、同大学建築科助教授に就任。1961年丹下健三・都市・建築設計研究所(現・丹下都市建築設計)を設立。国内外でさまざまな建築、都市計画を展開した。2005年没。

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