September 19, 2023 | Culture | casabrutus.com
これまでになかった手法で、新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。ドイツ・ドレスデンに生まれ1960年代より現代アートの最前線に君臨するゲルハルト・リヒター。彼が絵画や写真に追い求めるものは一体何なのか。
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絵画とは、目にみえず理解できないようなものをつくりだすことである。
現代アートの巨匠と言われ、世界中の名だたる美術館で個展が開催されているゲルハルト・リヒター。彼は、油彩画、写真、デジタルプリント、ガラス、鏡など多岐にわたる素材を用い、表現するモチーフも具象抽象と様々だが、一貫して「みる」という認識について取り組んできた作家でもある。
活動の初期に取り組んできたのは、雑誌や新聞の切り抜きや家族写真などを描き写す「フォト・ペインティング」だ。広告写真や名所の風景などの中に、事件や戦争の犠牲者になった人たちを描き移したものなどが多くあるのが特徴的だ。そして、写真をそのまま描写しているのにピントがボケたり、ズレたりしている。そうすることによって、絵画はより写真に近づくのだとリヒターは語る。
その他にも「何の感情も、連想も生み出さない」色であるグレイを用いた「グレイ・ペインティング」や、モチーフも形も存在しない色見本を描いた「カラーチャート」、写真を精緻に描く手法からキャンバスに絵の具を置き、へら状の道具スキージを押し付けながら描く「アブストラクト・ペインティング」、写真の上に油彩を施した「オイル・オン・フォト」……。と、常に「みる」ということの不確かさへ問題提起し、みえないものを希求する実験的なシリーズに挑戦している。
リヒターは自身の作品や問題意識について、多くの対話をし、言葉を残してきた作家でもある。彼の日記から一部抜粋する。
「イリュージョン——より適切には仮象=光(ルビ:シャイン)。光は私の一生のテーマだ(アカデミーの新入生歓迎演説のテーマにいいかもしれない)。存在するあらゆるものが我々の目にみえるのは、我々がその反映する光(シャイン)を知覚するからであって、そのほかのものは目にみえない」
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