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19世紀に閉山した錫鉱山をズントー建築が掘り起こす。

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October 8, 2016 | Architecture | a wall newspaper | photo_Yuji Ono text_Megumi Yamashita editor_Yuka Uchida

ノルウェーの錫鉱山跡に姿を現したズントーの新作。土地の歴史を掘り起こして弔う、巨匠ならではの感動作。

待望のズントーの新作、ノルウェーに完成です。
9月8日の開館式前日、視察に現れたピーター・ズントー。ギャラリーとして機能する背後の建物は、最長部24mの細い木造の脚に支えられ、岩の上に建っている。
待ち続けること14年。寡作で知られるピーター・ズントーの新作〈アルマナユヴァ錫鉱山〉が完成し、開館式前の視察に立ち会う機会を得た。場所はノルウェー南西部のローガラン地方。壮大な自然の中に建築的名所を点在させる「ナショナル・ツーリストルート」の一環で、ズントーにとっては魔女裁判犠牲者を弔う〈ステイルネセ・メモリアル〉に次ぐ2作目だ。今作は19世紀に閉山した錫鉱山を記念するもの。渓谷の絶壁に囲まれた鉱山跡にある。
壮大な景観と石積みの擁壁が圧巻。手前がトイレ、真ん中がカフェ、奥がギャラリーの建物。
建物は3つあり、最初に現れるのは公共トイレ。そこで車を止めて石を積み上げた階段を上り、山道を上がっていく。間もなく見えてくる建物がカフェで、木をボルトで留めて組んだ枠組みに、箱を入れ込んだ構造。外内壁は合板にジュート布を張り、黒いアクリル樹脂で塗り固めてある。階段を上がってブリキ板を張った重いドアを開けると、黒い壁に切り取られた窓からダイナミックな風景が広がった。家具や照明などもすべてズントーがデザインしたものだという。さらに奥へと進むともう一つ建物があり、こちらは鉱山の歴史やズントーのスケッチなどの展示があるギャラリーになっている。
カフェ内観。壁はジュート布にアクリル樹脂を塗ったもの。床はコンクリートに亜麻仁油を塗ったもの。家具や照明もズントー作。
カフェ外観。黒い箱を木の枠組みが支える。
取材を進めていると、ズントー本人が視察に姿を現した。担当者たちと細かく調整を進めている。すると突然「君、そこに立って」と声がかかる。外に設置するテーブルの位置を決めるため、人柱役を仰せつかった。これから建てる設備の仮設模型では、現場の棟梁から「場所がよくない」との意見が出る。しばし周囲を見て回った後「その通りだ」と棟梁を讃えるシーンもあった。「その土地が持つ声に耳を澄ませ、前からあったものを掘り出すようにデザインをする」という工程を垣間見る思いがした。その工程はスローだが、待ち続け、遠路足を運ぶのがズントー建築の醍醐味というものだ。
視察中のズントーに密着取材!
これから建てる施設の実物大模型前で打ち合わせをするズントー。

ピーター・ズントー

1943年生まれ。スイス人建築家。代表作に〈テルメ・ヴァルス〉〈ブレゲンツ現代美術館〉〈コロンバ美術館〉など。高松宮殿下記念世界文化賞、プリツカー賞、英国王立建築家協会賞などの受賞歴がある。

〈Allmannajuvet Sinkgruver〉

アルマナユヴァ錫鉱山 カフェとギャラリーは冬季閉鎖中。来春には鉱山跡トレイルも開始予定。 Sauda, Ryfylke。Saudaより国道520を東に9km。公式サイト

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