September 23, 2016 | Vehicle, Architecture | Driven By Design | photo_Tatsuya Mine
text_Hiroki Iijima
富士山を望む広大な敷地につくられた盲導犬の育成施設。犬と人、それぞれの目線に立ってつくられた建築に、家族みんなで乗れるランドローバーで向かいました。
富士の裾野、富士宮の街から朝霧高原に向かう途中の草原に建つ日本盲導犬総合センター。盲導犬の育成や周知活動のほか、視覚障害者のための催しなども行う。日本盲導犬協会の同様な施設の中では唯一、見学者に常時開放している。
全棟平屋ですべてが回廊で結ばれ、各棟は単一の使途に限定された機能を持つ。盲導犬を必要とする視覚障害者は、約1か月の間ペアを組む盲導犬との共同訓練に入るため、専用の宿泊施設も用意されている。屋根の勾配や向きはあえて統一せず、杓子定規な雰囲気と無縁なのは、さすが日本建築学会賞作品賞受賞だけある。
回廊部分に設置された訓練用の障害物。ガラス張りの館内には、自然光がしっかり入る。
盲導犬の有力候補たち。盲導犬はまず血統によって選ばれるという。
視覚障害があっても黒と白の対比で空間的な把握ができるようにされた多目的トレーニングルーム。
角形でなく適度に丸みを帯びたボディが好評。
遠目から見てもオレンジのボディカラーが強い存在感を放っているのは、ランドローバー・ディスカバリースポーツ。とはいえあの角形デザインのディスカバリーとは直接関係のない新車種だ。かつてのフリーランダーの後継、あるいはレンジローバー・イヴォークのランドローバー版ともいえる。実際、エンジンやプラットフォームはイヴォークと共用だが、サイズ・重量などはひとまわり大きい。カッコ良さではピカ一のイヴォークも実用性に難がある、と悩む人向けのモデルだと言えばわかりやすいだろう。
今回取り上げたのは、このクルマを走らせるのが気持ち良いからということに尽きる。特に速いわけでもないし、高級感に満ちているわけでもない。しかし、まとまりの良さという意味でこのクルマは秀逸だ。特にイギリスのカントリーロードのようにカーブもアップダウンも緩やかな道では、最高のパフォーマンスを発揮する。まろやかなクルマの動きに包まれながら常にキリッとしたステアリングフィールを味わい続けるのはなんとも豊かな体験だ。
ところで、メインカットの撮影にも参加してくれた犬たちがとてもお利口なのは、厳しく訓練されたからではなく、ひとつ良い行為ができるようになると誉められ、それが嬉しくてゲーム感覚で習慣性を持つようになるからだそうだ。撮影中も、職員に褒められて嬉しそうな犬たちの表情を見ることができた。犬好きの読者ならば、ドライブの目的地として一度訪れてみる価値は十分にあると思う。
7人乗り仕様の室内空間はこんな感じ。+2の最後席は子供向け。
巡礼車:ランドローバー・ディスカバリースポーツHSE
エンジンは2リッター4気筒のターボ、変速機は9速AT。輸入車ではフルサイズのSUVにしか設定のなかった7人乗り仕様をオプションで選べることも大きな魅力。もちろん老舗4WDブランドによる悪路走破性能の高さもしっかり担保されている。5,908,000円(ランドローバーコール TEL 0120 18 5568)。
巡礼地:日本盲導犬総合センター
設計/千葉学。視覚障害者が方向感覚を失ったりしないように施設内の曲がり角がすべて直角になっていたり、床の材質の違いによって自分がどこにいるのか認識できるように工夫されている。盲導犬の誕生から最期まで責任を持つため、庭に犬の納骨堂も用意されている。静岡県富士宮市人穴381 TEL 0544 29 1010。